【特別連載|私の学びの遍歴】第八回 教鞭をとり実感した「日本以上のアメリカの学歴社会」
以前より好評いただいている特別企画(全9回)「私の学びの遍歴」
今回は「第八回」の更新になります。
第一回(小中学生時代編)の記事はこちらから
http://tomohirohoshi.com/?p=2332
第二回(高校受験時代編)の記事はこちらから
http://tomohirohoshi.com/?p=2348
第三回(高校時代編)の記事はこちらから
http://tomohirohoshi.com/?p=2367
第四回(大学時代編)の記事はこちら
http://tomohirohoshi.com/?p=2373
第五回(大学時代編)の記事はこちら
http://tomohirohoshi.com/?p=2390
第六回(アメリカ大学院生時代編)の記事はこちら
http://tomohirohoshi.com/?p=2402
第七回(大学院生時代編)の記事はこちら
http://tomohirohoshi.com/?p=2411
テキサスA&M大学で修士を終了して、スタンフォード大学で博士課程への入学が決まりました。
修士取得をした1月からスタンフォードの秋学期が始まる9月まで、テキサスA&M大学と周辺の短大で論理学入門のクラスを教えることになりました。テキサスA&M大学では200人程度の大型のクラスを持ちました。主に大学生で20歳前後の学生がほとんどでした。短大のクラスは40−50人程度で効率の大学にしては比較的小さめでしたが、 18歳から 60歳くらいの生徒まで、キャリアや年齢が多様なグループを教えていました。
アメリカで教えることも、大学レベルで教えることも、ともに初めての経験だったので、学ぶことは多くありましたが、教師として生徒と触れ合っていく中で、一つ深く実感したことがありました。
どの様な目的で生徒は私のコースを受講するに至ったのか。さらになぜ、学位を取得しようとしているのか。様々な生徒の話を聞くうちに、根強く激しいアメリカにおける学歴社会のあり方を意識する様になりました。
特に短大での年齢多様なクラスでは、学位を取得してキャリアアップを目指す社会人が何名もおり、 会社のこれこれのポストを狙っているが、その会社では短大学位と、これこれの専攻が必要だ、等々の話をよく聞きました。そうした会話を通して、アメリカにおいて、学位とキャリアの選択肢が非常に詳細に、密接に関連していることを理解する様になりました。
日本以上の学歴社会であるということはどこか聞いてはいたものの、まさにその通りであると体感することができました。
アメリカでは個々の職業に該当する学位と専門がはっきりと決まっているので、希望の職業につくには相応する学歴が必要です。もちろん、日本でも、例えば、大卒か否かということが、 大きく職業選択の可能性に影響するかもしれません。
ただ、機械工学の修士、経済学博士などと、特定の学歴を職業応募資格に指定するということは ごく少数の専門職に限られます。アメリカでは多くの職業、ポジションで 資格が 学士、修士、博士といった学位レベルのみならず、学位に該当する専攻分野も職業資格として指定されていることが多々あります。
また、それと呼応して、取得学位と専門分野によって、生涯収入の差が大きく分かれてきます。例えば、一般的に、大学卒より大学院卒の収入の方が格段に高くなっていたり、工学専攻を一つ取っても、化学工学が建築工学を大きく上回ったり、などなど。どの様な学位で、どの様な職業に道が開けるか、どの様な収入が期待できるかということが詳細に分析されており、職業やポジションの募集においても 学位を詳細に分類して職業資格として提示することがスタンダードです。
これはもちろん日本とアメリカの職業形態、社会構造の違いを反映しています。アメリカでは職業の専門性が高く、日本の様に企業が一般職で一括に社員を就職させるという形はほとんど取られることがありません。また、日本では終身雇用の文化が根強く残り、ゆっくり時間をかけて駆け出しから初めて、社内で複数の分野で経験を積み、昇進を重ね、長年かけて社員を 育成していくというモデルをとってきました。
一方、アメリカでは、一つの会社内で昇進を続けて、長年勤めるということが前提されていません。そのため長い時間をかけて社員を育成していくという考え方よりも、 与えられたポジションに対して即戦力の人材を登用していくというモデルが採用されています。該当するポジションにどの様な知識とスキルが必要なのか。
その必要性を満たすにはどの様なトレーニングが必要か。そのトレーニングはどの様な専攻で、どの様な学位レベルでなされるのか。そうした詳細を明確に定義していき、ニーズにあった即戦力を企業は求めていきます。そうした社会環境の中で、学位の就職資格としての細分化が進んできた背景が考えられます。
それから、どこの大学から該当する学位を得ているかということも、もちろん大きな要因になっています。有名、名門大学でより収入やステータスの高い職業がより得やすくなるのは、日本でも同様だと思います。ただ、大学ごとの年収のポテンシャルの違いには日本以上のものがあります。
興味のある方は、大学、学位ごとの年収平均の比較やランキングなどを、ご覧になるのをお勧めします。インターネットを通して、様々な資料を見つけることができます。アメリカの学歴社会ぶりに、驚かれることだと思います。
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