【特別連載|私の学びの遍歴】第二回 高校受験時代編

特別連載

先週より連載スタートした「特別企画(全9回)」として、私の学びの遍歴をお話しさせていただきます。

第一回(小中学生時代編)の記事はこちらから
http://tomohirohoshi.com/?p=2332

今回は「第二回」として、私の高校受験時代にスポットライトを当てたいと思います。

中学生1年の成績は、小学校からほんの少し上向きにはなっていましたが、大幅な変化はなく、5段階で、ほとんどが4、あとは5と2がちらほら、という感じでした。

その状況が 中学2年の後半ぐらいで急転したのです。

英語の成績はもともと良かったのですが、 たまたまクラスで最高得点を取ったことがありました。そのことをきっかけに、当時の英語の教師が私を英語の超優等生として扱うようになりました。

それから他の教科でもテストでの成績を意識するようになり、中学2年の2学期までには他の教科の成績も上がりだし、3学期を終えた時点では、ほとんどの教科で5をとっていました。それと同時に学習進学塾に通い始めました。

中3の時には、成績もさらに向上し、学校や塾でライバル達を意識して受験勉強に励みはじめました。特に塾では受験勉強と他のライバル達の進度に驚き、良い刺激をうけ受験に向けてのモチベーションが上がって行きました。

次第に学校の勉強を、受験に役立たないレベルの低いものであると感じるようになり、「塾での勉強」のみに集中するようになりました。また、学校の勉強も、塾での勉強ができていれば、問題なく成績がとれるような形になっていました。

そうして受験期を迎えました。進学希望校のリストを塾で初めて提出した時に、「中堅校」だらけで、あまりに謙虚だということで突き返されて、新しいリストを作らされました。

第一志望は国立の最難関校、滑り止めは有名私立校といった具合に希望校を選択していきました。共学志望は譲れなかったので、練習用のお試し受験に選んだ男子校を除いて、すべて共学で志望校を揃えたのを記憶しています。

その頃になると、さらに私の気持ちの中で、学校離れが進んでいました。授業の「レベル」は低く、目指すところの違う他の生徒達と急速に距離が広がっていきました。

学校での活動が、朝起きてから夕方帰宅するまでの時間つぶしというような位置付けになってしまいました。志望校相談に関しても、 担任の反応は塾とは真逆で、難関校揃いの志望校リストに、再考慮を促されました。全く無視して、塾と相談した志望校リストのまま受験に臨みました。

さて、ここに私の体験を通して綴った、受験のもたらす学校からの乖離とも言えるこのような現象は、何ら珍しいことではないのではないかと思います。

「受験」は生徒のそれまでおかれていた環境に大きな影響をもたらします。

私が経験したように、学校や友人関係、地域など、生徒がそれまで日々に触れてきた生活空間から何らかの乖離を生じさせてしまうかもしれません。

特に学校が受験校でない場合、学校での授業、授業外活動の意義が希薄化したり、友人グループとの受験への取り組みの齟齬がうまれたり、地域の子供達、家族、等々との関係にも善かれ悪しかれ影響を及ぼします。

そのことを十分に意識して、生徒たちをサポートすることが重要です。受験と学校との乖離は現在の受験体制や公教育のあり方の中で、ごく自然で、受験の道を選択した場合には避けて通ることができません。

好ましいことではなくても、そのことを受け入れて、生徒をサポートしていかなければなりません。乖離を認めず、生徒を学校に引き止めようとしたり、生徒の交友関係の変化にたじろいでしまっては、サポートになりません。

本格的な「受験の道」を選択したならば、その害を受け入れ、サポートすべきです。

例えば、生徒が受験に没頭し、目標意識を持ってモチベーションが保たれている場合でも、受験外の生活空間に生徒が意味を見出せない場合には、その生徒は生活の大部分を空虚に過ごさなくてはいけないかもしれないということは意識しておく必要があります。

何らかの安らぎの場や、部活動、他の習い事、友人関係等で、受験外で意味や価値をみつけられる場を担保してあげることで、仮に受験で目標とする結果が出せない場合のセーフガードを作っておくことが重要です。

また、生徒が受験勉強で辛い思いをしている場合には、その他の生活空間が重要なセーフスペースになります。その様な場合受験に向けて生徒を再度炊きつけたり、サポートしたりすることだけに注力するだけでなく、それ以外の生活空間で生徒が自分自身を見つめなおせる機会を意識的に与えることが必要です。

ちなみに、私自身は、極度な「受験戦争」を避けて通れるのならば避けて通った方が良いと思っています。ここまで論じてきたように、教育の選択肢は国内外に拡大し、次第に受験は形を変えていくでしょう。

日本の受験にしがみつく必要はないし、それが得策とは言えません。ここまで述べてきたことは、受験を選んだ場合には、その自然な帰結を理解して、受け入れなければならないと言うことです。

さてさて、私の「高校受験」に話を戻しましょう。残念ながら第一志望の学芸大学附属高校には落ちてしまいました。

一方で、他の志望校には全て合格することができました。第二志望群の中から、最も女性との割合が高い「国際基督教大学高校」に入学を決めました。当時男女比は1対2だったと記憶しています。

私の両親は、生花店経営とはいうものの、子供を私立校に気軽に通わせることができるほどの経済力があったわけではなかったと思います。それにもかかわらず、うるさいことを言わずに一貫して私の意志をそのまま尊重して進路をサポートしてもらったことを非常に感謝しています。

今思えば、留学したり、米国に移住したりしたいと思うことが可能だったのも、辛抱強く何も言わずに見守り、暖かくサポート(精神的にも経済的にも)してくれていたからだと思います。

「科目としての英語」ではなく、「言語としての英語」へ戻す
ICU高校のイマージョン方式英語教育

国際基督教大学高校(ICU高校)は、国際基督教大学(ICU)のキャンパスの中にあります。東京都心の喧騒から離れ、自然に囲まれた広大なキャンパス。

正門から桜並木、チャペルを通って、キャンパス中心部。大学の教室校舎、関連施設がひとしきりつづいて、 少し離れたところにICU高校があります。

ICU高校は様々な国からの帰国生を受け入れています。私の学んでいた当時は帰国生が3分の2、日本のみで生まれ育った「一般生」が3分の1という構成でした。

欧米とアジアの国々からの帰国生が最も多かったようですが、アフリカや南米の国々からも帰国生が集まっていました。帰国生たちの日本への順応度は非常に多様でした。

海外に近年、数年だけ居住だったため、ほとんど一般性と状況が変わらないような場合もあれば、生まれてから国外に居住しICU高校に入学する直前に帰国し 、日本への順応どころか、日本語もそれほど流暢に話さないという生徒もいました。

それから、海外に長く居住していたものの、日本人学校に在籍し、日本のカリキュラムで日本人コミュニティーの中で暮らしてきた生徒も多数いました。

ほとんどの生徒が日本人生徒でしたが、非常に複雑な形で、ユニークな多様性をはらんだコミュニティーがICU高校にはあります。

多様なバックグラウンドからくる帰国生のニーズに対応して、英語、数学、国語はレベル別のクラス編成になっていました。

例えば、英語のトップのクラスは、米国、英国の高校レベルで、シェイクスピアなど、高度な英語教材を使っていました。 すべてのレベルでネイティブの英語教師により、会話、リーディング、ライティングが英語のみで教えられました。

下2つのレベルは主に日本で生まれ育った一般生、もしくは、英語圏外からの帰国生が多く、 週一度だけ日本語で英語文法のクラスがありあました。一番下のレベルでも、高校一年の段階ですぐに英語レポートの書き方の基礎を学び、すぐにリサーチレポートを書くというようなカリキュラムがあったと思います。

英語圏外からの生徒にとっては、大きなチャレンジではありますが、活きた英語 に直接触れることによって言語能力向上を図る、イマージョン(immersion)方式がうまく機能していたと思います。

上位のクラスも含めて、英語カリキュラム全体としても、多様なバックグラウンドからくる生徒のコミュニティーを実現することで、 日本ではかなり珍しい形の英語教育を可能にしていたと評価しています。

私自身は下から2番目のクラスにプレースされました。数学や国語も、他の日本受験を突破してきた一般生たちと同じようなクラスとなりましたが、日常では、日本にまだまだ順応し始めの英語圏からの帰国生と主につるんでいました。

海外での暮らしぶりや文化を聞いて驚いたり、「これは英語でどんな風に言うの?」という具合に活きた英語の表現を教わったり、それを生かして一緒にナンパに出かけたり。

英語 や日本以外の文化に大きく影響を受けた若者と日々に接し、日本にいながら海外留学しているような雰囲気を楽しんでいました。

私の人生において、結果海外留学へ心が開いたのも高校でのこうした経験が大きく影響したことは間違いないと思います。

英語力の方も英語のクラスでのイマージョンに加えて、そうした友人とのやり取りの中で、さらに実用的な英語の話し方を学び楽しむことができ、英語を話すことへの精神的障壁も大分取り除かれていったと思います。

さて、日本の英語教育について私の考えを網羅的に論ずるのは他の場所に譲りたいと思いますが、ここでは関連する点を一つだけハイライトしたいと思います。

日本の学校における英語教育は、 生徒にとって本来的に言語であるべき英語を科目としての英語に置き換えるプロセスになってしまっていると感じることが多々あります。

英語教育の導入部分においては、生徒たちも新しい言語に触れる興奮を享受しているのではないかと思います。アルファベットをきっちり習った。こんなことが言える。ある段階で導入される新しい分野に学びの喜びを感じる。

そうした現場を、生徒として、また教師としての目線から、実感してきました。しかし、その興奮や喜びもつかのま、詰め込み式やテストベースの教育方法に触れていくことになります。

どうして重要なのか分けがわからないけれども、とりあえず毎週10単語覚える。主語の一致を忘れたので、テストで減点されてしまった。

そんな経験をしているうちに受験を意識しなければならない時期が訪れます。どの様にすれば点数をより多く取れるか。テストをどの様に攻略できるか。ミスを少なくできるのか。

どんどん本来の言語としての英語というものから離れ、科目としての英語に向き合うことを強いられていきます。

文法的に正しい文章を書いたり、正しい発音で発音したりすることが目的として内化され、生徒は英語に対して受動的で、間違うことに萎縮した姿勢を持つにようになってしまいす。

多少間違ってもスムーズにコミュニケーションをすることや、混乱しながらも違う文化や概念を学ぶなど、生きた言語としての英語に対する姿勢は徐々に失われていくことになります。

もちろん、英語教育の目的は単一的ではありません。 日常で実用的な英語を身につける、専門的な英語仕様の基礎を築く、外国語に触れ流ことによって自己の母国語、文化や概念をみつめなおすなどといった具合に、多岐にわたり、国や地域によってニュアンスが異なります。

しかしながら、つまるところ英語教育や学習の目的は、英語が生きた言語であり生徒がそれに触れることの意義は何かということを反映したものでなくてはいけません。

長短所あると思いますが「イマージョン教育」は、言語としての英語にふれる喜びを維持する一助としては非常に効果的です。

イマージョン教育は生きた英語に触れる機会を増やし、言語としての英語に向き合う機会を与えてくれます。現在は英語学習の一部として徐々に取り込まれている流れがあるので、そういった動きがより活発になっていくのを見守っていきたいと思います。

また、学校が現在の英語教育を改善する中、家族レベルでも生徒をサポートしていくこともできます。海外旅行に行ったり、ホームステイをしてみたり。

国外は難しいにしても、国内で外国人と英語を話す機会、英会話教室、SNSを利用して、海外の人々とのコミュニケーションの機会を持つこともできます。

もちろん、英語圏の音楽、映画、美術館などなど、小さなことでも、英語や英語圏の文化に触れる機会は数多く存在します。

そうした大小様々な機会をできるだけ継続に提供したり、進めたりすることができるだけでも、英語へのイマージョンの効果は絶大です。

イマージョンで科目としての英語から言語としての英語に戻す努力をしていくことで、生徒の英語学習のサポートをしていくこと大切です。

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