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【アメリカ教育のトレンド「SEL」とは?】社会性と感情の学習で、学力アップ!!

教育

「失恋したからって成績には関係ないはず。」
「友達とうまく行ってないことは勉強には関係ない。」
「部活の失敗はスッキリ忘れて集中して宿題に取り組みなさい。」
「ちょっとくらい風邪ひいてたって頑張りなさい。」

教育現場や家庭では、ありがちな叱咤激励のように思えてしまいませんか?私たち自身も自分で自分を言い聞かせるのに使ったことがあるかもしれません。

こうした叱咤激励が自然な会話の一部となりうる一方で、日常生活での精神の安全と身体的健康は効果的な学習には欠かせません。感情的に不安を抱えていたり、友好関係に問題があったり、病気であるときには良い学習を得ることが困難になります。

所詮一人一人の人間のある一側面だけを取り出すことは不可能な訳です。私たちは、感情や理性、肉体など、それぞれの要素が融合した全体です。他の要素を全く無視して、一つの要素だけを切り離して考えると重要な人間の本質を見失ってしまいます。

子供は学習者である前に人間なので、より効果的な学びをサポートするためには、まず、健全な精神や体の健康をサポートしてあげることが必要です。学習に焦点を置くがゆえに他の大事なことを蔑ろにしてしまってはいけません。

最近のアメリカ教育のメジャートレンド「SEL」について解説

現在アメリカの教育現場ではソーシャル・エモーショナル・ラーニング(social emotional learning)が大きなトレンドの一つになっています。頭文字をとって「SEL」と略称で呼ばれています。直訳するならば、「社会性や感情の学習」と言うことになるでしょうか。

SELとは、他の人々とうまくやっていったり、自分や相手の感情を理解することによって、社会の中で適切に行動できるための知識やスキルを学習していくことを指します。

特にここ数年で、SELのためのプログラムを様々な形で意識的に導入していく取り組みが、公立私立を問わず、アメリカの学校や学区に急速に広がってきました。そうした流れの中でSELは教育の最重要テーマの一つになったと言っても過言ではないでしょう。

なぜSELが流行っているのか?

このSELのトレンドは、1960年代に行われたアメリカのYale大学のプロジェクトがきっかけであると言われています。

まずは、Yale大学のお膝元であるNew Havenにあった低所得の有色人種学区の学校において、生徒間の関係性や学校での安全で健全な環境づくりに主眼を置いたプログラムが導入されたということです。

そのプログラムは大成功を収めました。まずプロジェクトの直接の目的であった、生徒の社会性や感情に関する能力の学習効果が確認されました。生徒の出席率が大幅に向上したり、その他のクラス内や課外活動での生徒指導の問題が激減したりしました。

それだけではありません。さらに驚くべきは、それと同時に、生徒の学力も大幅に上がったというのです。生徒の社会性や感情をサポートすることで、学力の向上につながる。このSELの成果は、冒頭で触れた学習者の全体性を思い起こさせますね。

長年SELを牽引してきた「CASELの枠組み」をご紹介

そうしたSELの歴史を背景に、これまで様々なSELの枠組みが考案されてきました。この中でもアメリカのSELを90年代から牽引してきたのがCollaborative for Academic, Social and Emotional Learning(CASEL)です。

ここではCASELの枠組みを簡単にご紹介したみいと思います。詳しくはhttps://casel.org/what-is-sel/のウェブサイトを参照いただけると良いかと思います。(英語になっちゃいますが。)

SELは、他の人々とうまくやっていったり、自分や相手の感情を理解することによって、社会の中で適切に行動できるための知識やスキルを学習することです。そうした社会性や感情の学習をエビデンスに裏付けされた方法をもって、システマティックで意識的な形で学校のプログラムに導入していくと言うのがSELのトレンドの焦点になります。

CASELの枠組みだと、SELが対象にする社会性や感情の能力が5種類ほどあります。

• 自分を理解する力(self-awareness):自信をもって成長マインドセットで、自分の強みや弱みを理解することができる。
• 自分で自分を統制する力(self-management):ストレスとうまく付き合って、自分の衝動を適切にコントロールし、自分で目標を設定して到達していくために自分を動機づけることができる。
• 他者を理解する力(social awareness):多様な背景や文化を有する人たちの視点を理解して、共感したり思いやったりすることができる。
• 他者とうまくやっていく力(relationship skills):他の人とうまくコミュニケーションができ、協力できる。不健全な場の空気に流されない。対立を建設的に解決する。他人に助けを求めたり、自分から他人を助けることができる。
• 適切な意思決定をする力(responsible decision-making):自分の行動や、他人とのやり取りの中で、倫理的基準や安全性、社会的規範に基づいて、建設的な選択をすることができる。

この5つのカテゴリーに準じた社会性や感情の能力を総合的にサポートしていくのがSELのプログラムです。SELカリキュラムを学校に導入して、生徒のSELを直接的にサポートする。

もともとある学校の教育プログラムにSELの要素を取り入れて、生徒が日々の学校生活の中で効果的に社会性や感情の能力を身につけることができるようにする。

保護者や地域との連携の中で全体的に生徒のSELをサポートしていく。それぞれの学校が様々な形で様々なレベルにおいて、SELを教育の主要テーマに位置付けて、包括的に子供の社会性や感情の能力の発展をサポートしていこうとしています。それが現在のアメリカ教育におけるSELのトレンドです。

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