アメリカの私立高校。驚愕の学費事情とは?

教育
富裕層向けに作られている教育オプション?

アメリカの私立高校の特色を一つあげよと問われれば、まず第一声で言いたいのは、学費がものすごく高いということです。今回は、アメリカ独立型私立学校協会(National Association of Independent School)発表の統計に基づく、アメリカの私立学校の学費について紹介してみましょう。

まず、都市部の名門私立学校においては、初等、中等教育共に、年間400〜500万円程度の学費はザラです。 都市部以外も含めた独立型私立学校の全日制初等中等教育の年間の学費のアメリカ全国平均は2019年度に300万円に差しかかろうとしています。

独立型の私立高校は特に学費が高いので、全ての私立学校(非独立型の私立高校には教会等の運営する学校が含まれる)に範囲を広げても、全国平均で130万円程度になっています。

これでは公立学校に加えた選択肢があると言っても、必然的に富裕層向けの教育オプションということになってしまいます。

経済格差 ≒ 教育格差

特に近年の独立型の私立学校の学費の高騰ぶりは過去に類を見ないものです 。富裕層の年間収入の伸びが他の所得層に比べて最も高いのは、拡大するアメリカの 格差社会を象徴したものであるとして、度々言及されています。

しかし過去10年ほどの独立型私立学校の全国平均の上昇率は、アメリカの上位5%の富裕層の所得の増加率さえも超えていると報告されています。

そうした背景の中で、かつては分厚い中間所得層にも身近だった独立型の私立学校が、今ではごく一部の所得層向けのものになりつつあるのです。

もちろん、こうした現状への問題意識はこれまでも存在し、さらに高まりつつあると言えます。私学の学費が高騰する中で、大学などの高等教育のみならず、初等中等教育においても、各学校で無償の奨学金を導入しさらに拡充されてきました。ごく一部の富裕層の生徒を集めることを避けて、学校の中に所得階層の多様性を持つことの重要性が認識されてきました。

学校内での所得層の多様化は、社会における教育の格差化を和らげ、生徒たちに様々な所得階層が存在する社会の中で生きていくすべを身につける機会を与えるという考え方です。

こうした状況の中、各学校は寄付金などの資金調達に注力しなくてはいけないため、初、中、高等教育を問わず各私立学校では資金調達(ファンドレイジング)専門の部署を設置しています。現在では全体で平均して初中等教育で15%、高等教育で40%ほどの学費収入が何らかのスカラシップや奨学金で賄われています。

もちろん、そうした奨学金の平均分を差し引いたとしても、私学の学費の高さは否めません。400万、500万、600万と高騰している大学の学費で言えば、40%平均で差し引いたとしても、200、300、400万円程度です。

高校と大学が生徒の取り合いを始めた?

こうしたアメリカの私学の学費の高さがもたらした興味深い現象として、高校と大学が競合しているということが言われるようになりました。高校と高校、もしくは、大学と大学で、限られた数の生徒を取り合うのはもちろん自然な競合の現象だと言えます。

しかし、就学レベルの違う高校と大学が生徒を取り合い競合するというのは想像し難い話です。アメリカの学校では日本でいう中3から高3までの4年間をハイスクールと呼ぶのが通例なので、高校から大学まで合わせて8年程度あります。保護者としては、その8年全てで、私学の高額な学費を支払うのは難しい。

それでは、高校の時は公立に在籍させて、その間に貯金を上乗せし、大学で私学のオプションでも可能になるように準備していく。もしくは、高校の時に質の良い私学に通わせ、大学で能力ベースの奨学金を獲得できるように準備させるか。

多くの保護者が、高校で投資するか、もしくは、大学で投資するかという二択に迫られているのです。そのため、高校と大学が競合するという興味深い現象が、起きているというわけです。

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