人間の幸せを研究する科学分野「ハッピネス」
ハッピネスの科学、「Science of Happiness」をご存知でしょうか。
前回のブログ記事で、私が校長をしているスタンフォード大学オンライン高校のウェルネスのプログラムに少しだけ触れました。(前回更新ブログはこちらをクリック!:【wellnessとは?】アメリカで大注目のコンセプトと教育界最前線)
現在、来年導入する高校1年のウェルネスのプログラムを組み立てていますが、そのプロジェクトの中で、いくつか懐かしいハッピネスの科学の文献をふりかえったので、今回は「ハッピネスの科学」について少しだけ、ご紹介しようかと思います。
目次
科学の一つの分野にまで成長した「ハッピネスの科学」
歴史的にみると、心理学等の研究分野においては、喜びや感謝といったポジティブな人間の感情は、つい最近まで研究の中心になってきませんでした。
むしろ、鬱や不安、恐れや怒りといった、人間のネガティブな感情とそれらが引き起こす病状などが中心に研究されてきたわけです。
しかし、20世紀末くらいからポジティブな感情を積極的に研究するポジティブ心理学の流れがうまれ、これまで科学的に研究されて来なかった人間のポジティブな感情の側面が深く研究されるようになってきました。
現在では様々な科学的知見が見出され、それを応用したトレーニングやセラビーなども開発されてきています。
ハッピネスの科学はその流れから生まれた分野で、文字通り人間の幸せを研究する科学分野です。
思想史で見れば、幸福とは何かということが、国や文明圏を問わず古代から考えられてきたわけですが、幸せを科学的な方法で研究していこうというのがハッピネスの科学です。
心理学、社会心理学、脳科学に至るまで、様々な科学の知見を活かして、幸せとは何かという問いを探究するわけです。
ハッピネスの科学は、現在では科学の一つの分野に成長したといってもいいでしょう。
実際、ハッピネスの科学やそれに関連するトピックに特化した研究機関を置く大学もあるほどです。
スタンフォードでは、Center for Compassion and Altruism Research and Education(思いやりと利他に関する研究教育センター)、お隣のバークレー大学ではGreater Good Science Center(より偉大な善を科学するセンター)などの研究機関があります。(日本語訳が難しいので直訳的ですが、何か良い役がある方は教えてください。)
「幸福感」が人にもたらす良い影響とは?
どんなことがハッピネスの科学では研究されているかというのをイメージしていただくために、いくつかハッピネスの科学の分野の研究結果の有名どころをあげてみたいと思います。
まず、ハッピーな人は寿命が長いということがわかっています。ロンドン大学の研究で、3800人の50代から70代の中老年層を対象にした実験で、普段から幸せを感じている人たちは、そうでない人々よりも35%長生きすることがわかりました。
ハッピーであることと健康の関係はその他にも様々に研究されています。
ハッピーな人は免疫力が高くなったり、心疾患や糖尿病にもなりくいことがわかっています。
それ以外にも、ハッピーであることの利点が多数研究されてきました。
例えば、ハッピーな人たちはよりクリエィティブな考えができたり、抽象的な難解なことを考える能力が高まるということが知られています。
それから、視覚的認知能力が高まるということも知られています。ハッピーなときは視野の中で意識できる部分が広まるというのです。
それから、ハッピーな状態だと、学習効率が上がったり、成績が上がるということも研究されてきました。
学問で充実して、物事を知ることの楽しみで幸せになるというのとは逆で、幸せだと物事を効果的に学べるというのです。
金と快楽のもたらすハッピネスの限界
それではどうやったら幸せになれるのでしょうか。
こちらも、心理学や、脳科学、生理学などの多面的な研究が進んでいます。
まず、お金は幸せを感じることに大きな限界があるということがわかっています。
プリンストン大学で行われた研究で、アメリカ人は年収800万くらいに達すると、それ以上の収入の増加は幸福感の増加につながりにくいことがわかっています。
また、GDPのトップの国々であっても、幸せ度で必ずしもトップになることがないことはすでに広く知られているのではないでしょうか。
また、肉体的な欲求や物質的な欲求を満たすことで得られる幸福は、快楽主義的な幸福(hedonistic happiness)と呼ばれることがありますが、そうした幸福は、長続きしないことが知られています。
一旦は欲求が満たされて充足を得ても、また同様かそれより大きな欲求の充足感を求めるようになるということが、科学的にも実証されています。快楽主義的感覚の適応(hedonistic adaptation)と言います。
どうしたらハッピネスを得られるか?
それでは、どうしたら幸せになれるのでしょうか。
ハッピネスの科学で、様々な方法や幸せと関連する心の働きが研究されてきています。ここでは、非常に基本的なところをご紹介します。
まず、適度なエキササイズ。適度なエキササイズは、肉体的な健康や精神的なウェルネス全てにつながっていると言っても過言ではないようです。適度なエキササイズで、成人病のリスクを下げたり、うつ病のリスクを下げたり、学習効率を上げたり。
それだけではなく、ハッピネスももたらしてれるということがわかっています。
それから、睡眠も大切です。よく寝て、健康に体を動かすということが、幸せを感じるための基礎になります。
それから、感謝を表すことが、幸福感を感じるということと強く関連していることがわかっています。
日頃から意識して、他人への感謝を表現するということが大切です。
さらに、人に同情したり、親切にしたりすることで、幸福感が上がるということもわかっています。
幸福は何かを与えられることよりも、他人への向社会的(prosocial)な行動をとることによりもたらされやすいということです。
この他にも非常に興味深いハッピネスの科学の結果が出てきています。ご興味を持たられた方は是非さらに掘り下げて学んでみてください。
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