【wellnessとは?】アメリカで大注目のコンセプトと教育界最前線

教育

先日このブログでもSEL、社会性と感情の学習のトレンドについて紹介しました。(http://tomohirohoshi.com/?p=410)その一方で、オンライン教育が急速に広がって、教育のセンターステージに上がってきているということも指摘してきました。(http://tomohirohoshi.com/?p=209)そうした2つのトレンドの中でSELがオンライン教育で可能かどうかという問いが一つの大きなテーマとして議論されるようになってきました。伝統的な学校での学習と違って、他の人々との面と向かってのやりとりがないのに、社会性や感情の表し方やコントロールの仕方が学べるのかどうなのか、というわけです。

私が校長をしているスタンフォード大学のオンライン高校では、高校という生徒の社会性や感情に関する能力に大事な時期をサポートしているということから、オンラインでのSELの課題に真っ向から取り組んできました。

SELをオンラインで成功させるだけでなく、さらに充実させていくということを、ここ数年の戦略的計画の一部として掲げてきたほどです。そのプロジェクトの研究成果の一部を、先日米国のギフッテッド協会で発表してきたという報告も以前のブログで紹介しました。(http://tomohirohoshi.com/?p=337

そうしたオンライン高校のSEL戦略の一翼を担ってきたのが、中学校3年生向けのウェルネス・プログラムです。今回のブログはウェルネスというコンセプトとウェルネスを促進するプログラムへの取り組みをご紹介していきたいと思います。

ウェルネス(wellness)とは?

「ウェルネス」(wellness)は、20世紀の半ばに、精神面などを含めた総合的な意味で「良い状態にある」という意味の「well-being」と身体的な健康を意味する「fitness」を合わせた造語とともに提案されたコンセプトです。精神、社会性、経済、身体など人間に重要であるすべての側面を含めた意味で、私たちが充足している、つまり、wellな状態であることを指します。

体が健康でも、先々の人生が不安かもしれません。不安がなくても、社会での孤立に苦しんでいるかもれません。私たちが一人の人間としてwellでいるかどうかは、身体の健康だけでない様々な側面に関連しているわけです。

そうした認識のもとで、多面的な視点から自分たちのウェルネスを考え、ウェルネスに関する知識や習慣を身につけたり、必要なスキルを学んでいくことを促進していこうという動きが、アメリカでは20世紀後半から現在に至るまで盛んに行われてきました。

今では、ウェルネスはアメリカで注目のコンセプトで、医療や学校、ビジネスの場などで幅広く取り入れられている考え方です。最近では、多くの会社で、ウェルネスを奨励するウェルネス・プログラムが様々な形で導入されてきています。

Stanford大学のBewellプログラム

スタンフォード大学も、そうした流れの中で、2000年代後半からウェルネスのプログラムを発展させてきました。

今年度のプログラムの内容は、大体以下のようにまとめられます。

1. 健康とライフスタイルのアセスメント。体重や身長、血圧などの基本的な健康に関連した数値から始まり、精神的な面や社交面などの質問に答えながら、自分の今年のウェルネスの目標とそれに必要なサポートを考えていく。修了すると、スタンフォードのフィットネスクラスなどのディスカウントがもらえる。
2. ウェルネス・プロファイル。血液検査などの基本的な健康診断と、ウェルネス・コーチによるカウンセリングで、自分の健康、生活、精神面でのウェルネスの状態をさらに詳しく理解して、ウェルネスの目標を達成するための計画を立てる。修了すると200ドルのインセンティブを受け取ることができる。
3. ウェルネスの取り組み。1と2で自分のウェルネスのアセスメントから、実際にウェルネスに取り組む。スタンフォードの健康に関するワークショップや、フィットネスクラスをとったり、自分のオフィスの職員と協力して、ウェルネス活動を行うなど、様々な選択肢から選ぶことができる。修了すると、260ドルのインセンティブを受け取れる。
4. ベリープログラム。ウェルネスの取り組みをしていくと、単位として「ベリー」を獲得できる。様々な取り組みをして、6単位、つまり、6ベリーをえると、100ドルのインセンティブを受け取ることができる。

お金でつっているだけではない!

スタンフォードのBewellのまとめを見て、一つ興味深い点は、金銭的なインセンティブが得られるということかもしれません。そのため、お金でつる浅ましい方法のようにも思えるかもしれません。

確かに、金銭的なインセンティブで、より多くの職員に参加のモチベーションをあげるということもあります。しかし、こうしたプログラムの背景には、それ以外の重要な考え方が隠れています。

まず第一に、職員が健康で幸せに暮らしていることで、職場での生産性が上がるという考え方です。この考え方に基づいて、多くの会社で様々な形のウェルネスプログラムが導入されてきました。余計な支出が増えるようでいて、逆に、会社としての生産性が上がるというわけです。

それから第二に、アメリカの健康保険の現状も関連しています。アメリカでは日本のような国が主導する健康保険制度がないので、それぞれの個人で健康保険を選ばなくてはなりません。そういった中、勤め先の福利厚生で健康保険がカバーされることがしばしばあります。

雇い主からすると、職員が病気がちであると、保険料が上がってしまうので、大きな負担になります。逆にいえば、職員が健康でいると、健康保険料を抑えることができるという利点があるのです。ウェルネスのプログラムで、お金をかけているようで、実は経費の削減につなげているという見方もできるのです。

オンライン高校で初めてウェルネスプログラムを展開中

ウェルネスの考え方は会社だけでなく、教育現場にも浸透してきています。ここ数年で、私が校長をするオンライン高校でも、ウェルネスのプログラムを展開してきました。もちろんオンラインの学校としては初の試みだと思います。

学校なので、ウェルネスのプログラムの主眼は、生徒が自分たちのウェルネスに関する適切な知識やスキルを得て、良い習慣を身に付けることになります。

大学のように金銭的なインセンティブはありませんが、生徒が自分でウェルネスをアセスしたり、学校で作成したウェルネスの教材を学んだり、目標を立ててウェルネスのコーチとカウンセリングをしていくというプログラムになっています。

2年前から中学3年のプログラムを導入し、良い成果が得られたので、来年から高校1年のプログラムを導入するため、現在、プログラムを作成している途中です。

オンラインなので、精神面や社会性に関するウェルネスを扱う題材は使いやすいのですが、エキササイズなどの身体面でのウェルネスを扱いにくいのですが、ヨガやジムでのエキササイズなど、オンラインを通しても一緒にやれるような、エキササイズを少し導入しようかと思っています。

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