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【東大女医との特別対談1】健康格差を生み出す日本の「間違ったご褒美文化」

教育

星友啓(以下、星):今回の対談では、東京大学の女性医学博士「柳澤綾子」さんをお招きしました。

主に、臨床現場で麻酔科指導医として手術業務を担当。研究分野では、客員研究員として研究を行いつつ、ママ女医の立場から健康格差解消のための啓蒙活動に尽力されご活躍されています。

健康格差も生み出す日本の「間違ったご褒美文化」

まず先生は、実際に健康教育を行うにあたって、どのようなことを意識していくべきだとお考えでしょうか?

柳澤綾子(以下、柳澤):日本では教育も含めて「ご褒美文化」がありますよね。

例えば、ご褒美の与え方として、「テストで100点を取ったら」「学年で5番以内に入ったら」という、結果に対するものが多くみられます。

ですが、前回の記事でもお伝えしたように、健康維持に重要な知識を行動に移すという「非認知能力」を高めるためには、結果ではなくインプット(過程)に対してご褒美を与えてあげる方が良いと考えられています。

ですから大人の健康問題に落とし込んだ場合例えば、5キロ痩せたらという「結果」ではなく、健康に関する本を読めたら、今日吸うタバコを5本減らせたらという「過程」にご褒美をあげる。

そうやって、小さい成功体験を積み重ねていくことで、自分のヘルスリテラシーを少しずつ上げていくことが重要です。

健康アウトカムは何十年後の話なので、その未来を予測して自分を自制して生きていくのはとても難しいですよね。

だから、目先の小さな自分の行動変容に対するご褒美、いわゆるスモールステップが必要なんです。

この点について星先生はどうお考えでしょうか?

星:本当にその通りだと思います。教育学や心理学では、ご褒美に関連して「褒め方」についての研究が非常に多いですね。

褒めることが一概に悪いのではなく、褒め方が重要で、やはりパフォーマンスや結果ばかりを褒めてしまうと学びの機会も減ってしまいます。

例えば、結果に対して「よくできました」と褒めてしまうと、子どもが「できること」を追い求めて、簡単な方法で結果を得ようとしてしまいます。

ですから、「よくできました」ではなく「よく頑張ったね」とか「よくチャレンジしたね」という過程を褒めてあげることがオススメです。

結果ではなく、何かをやる過程(インプット)の部分を褒めると、難しい問題に挑戦することや、間違えることにも恐れがなくなります。

柳澤:「結果」ではなく「過程」を認めてあげたり、ご褒美をあげたりすることで、小さい成功体験を積み重ねて、ヘルスリテラシーを上げていくということは、大人の方もご自身に対して是非行っていただいて、同時にお子さんがいらっしゃるご家庭であれば子どもたちにも実践してもらえたらと思いますね。

小さなお子さんがいるご両親には、アウトカム(結果)をいきなり子供に期待するのではなくて、まずはインプット(過程)を褒めてあげて、それが後々良い結果に繋がるという「感覚」を、子どもに体験させてあげてほしいです。小さい頃から日常生活の中で無意識にその思考訓練が身についていれば、大きくなった後のヘルスアウトカムにも大きな影響を及ぼすのではないかと期待します。

星:実際の機会をイメージするなら、例えば親の方は、子供たちに野菜を食べさせる機会があると思います。

子どもの健康を考えて、野菜を食べたら褒めるけれど、食べられなかった場合は叱ってしまう、ということは、ありがちなシーンではないでしょうか。

でもそうではなくて、食べられるまでのプロセスを見てあげると良いですよね。

今日は食べられなかったかもしれないけど、「よし、次は食べる」と口に出して言えた。
口まで運べなかったけど、ブロッコリーをお皿に乗っけるところまではできたから、ゴールに向かって少しずつ前進はしている。

そのような小さな変化を少しずつ褒めることで、結果的に良い方向に導いて、健康を維持してあげるといったイメージでしょうか。

柳澤:はい。あとは、例えばお皿にブロッコリー、トマト、人参が盛られていて、もしブロッコリーだけが食べられなかったとしても、それを責めるのではなく、人参とトマトを食べられたことを褒めてあげてほしいです。

日本人は基本的に真面目で良い子でストイックなので、トマト・人参を食べられた自分を良しとせずに、ブロッコリーが食べられない自分はダメだと捉えてしまう傾向にあります。

ですから、もっと肯定的にできたことを捉えて、小さな行動変容へと導いてあげたいですね。

それが、ゆくゆくはただ目先の結果や快楽ではなく、長期的な目線で物事をみる力、「非認知能力」や「自分の未来を予測する力」を育むことにも繋がるのだと思います。

【対談ゲストプロフィール】
柳澤 綾子 やなぎさわ あやこ

医師・医学博士 。東京大学大学院医学研究科社会医学専攻公衆衛生学分野 特任研究員。集中治療・麻酔科医として目の前に流れてくるたくさんの命を救いあげる日々 に疑問を抱き始めた頃、ハーバード大学公衆衛生大学院のイチローカワチ先生 の『命の格差は止められるか』という本に出会う。私の疑問の答えがここにあ るのではないかと考えた末、東京大学大学大学院医学研究科公衆衛生学の博士 課程に進学。社会疫学、医療経済学およびデータサイエンスを学ぶ中で、『病 気になったから会いに行くドクター』ではなくもっと上流にアプローチする医 師が必要だという考えに至り、博士課程修了後自ら『Medical Health Coaching Lab.』を立ち上げる。現在、臨床現場では麻酔科指導医として手術 業務に従事、研究分野では客員研究員として研究を行いつつ、ママ女医の立場 から健康格差解消のための啓蒙活動に尽力、講演、記事監修や執筆等を行なっ ている。

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