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【東大女医との特別対談2】子どもの健康に悪影響を及ぼす〇〇教育

教育

星友啓(以下、星):前回は教育格差と健康格差の繋がり、また、その格差をなくすための「非認知能力」について、本質に迫ったお話を伺いました。

今回はその上で、読者の方が自分の健康を維持したい、より良くしたいと思うときに、教育や健康という観点で、どのように行動していけば良いかお話しいただきます。

柳澤:ここまで私の方からは健康と非認知能力の関係についてお話をさせていただきましたが、実は私自身も二児の母なので、子育て、特に教育に関してはものすごく色々と悩んでいます。今の時代は私たちが子供だった頃と比べて、選択肢も多く多様性にも富んでいる、でも富んでいるがために、情報も溢れ玉石混交、みんな余計右往左往してしまっているようにも思えます。だからこそ世の迷える親御さん達を代表してぜひ全米トップ校の校長先生である星先生に伺ってみたいことがあるんです。

ここまで私の方から話しをさせて頂いた内容だと、つまるところ『目先の知識を詰め込むことよりも、非認知能力を高める、つまり思考過程などを重要視した思考訓練がのちのちにおいてとても重要である』と言うことを語ってしまっているのですが。
そんな中周りのお母様方の代表としての視点で発言させていただくと、正直『そんなことはわかっているのよ、でも目の前に迫る子供の受験勉強見ているととりあえず詰め込まないといけないのよー、そんな先のことは考えてられないのよー!』と言う声も多いのが事実だ、とも思います。

実際私が住んでいるエリアでは、年々受験の低年齢化かつ激化が進んでおり、受験のために就学前の早期教育を受けている子たちが、円形脱毛症になったりといった心身症の症状が出るくらいのストレスを抱えているという話も聞きます。
また目の前のプリントに書かれた問題を解く知識や学力はあっても、「それを使って何をするのか」を考えられない子が育ってきているのではないか、とも聞きます。

そんな状況を踏まえた上で、先生からみた日本の教育事情や受験についてそのあたりはどういった風にお考えなのかぜひ伺ってみたかったのです。

星:その「お受験」の話は、とても難しい問題ですよね。

格差が広がると、上にいなければいけないというプレッシャーが高まって、さらに全体での競争が激しくなって、子どもたちのメンタルや身体への悪影響がとても懸念されます。

柳澤:はい。私も医師としてはもちろんですが、母親として他人事ではありませんし、そうは言ってもなかなか自分の子供だと冷静にはいられない気持ちもよくわかります。頭では親としての理想が山のようにあって笑。私だって例えば、自然一杯の環境で、子供らしい日々を過ごして欲しい、一緒に試行錯誤して自ら考える力とそれを解決する道を見つける力をつけて欲しいし、創造力を育んであげたいし、等々あれもしたいしこれもしてあげたいし、と夢も希望もいっぱいなのですが笑。

星:アメリカでも、名門といわれる高校や中学でストレスが高い子供の状態が増えている現状があります。

そこで先日、それらトップ校の校長先生たちを集めて、スタンフォードで行われている最新の研究を聞いていただく会合を開催したのですが、そこで教育学を専門とするスタンフォードの学部長からお話いただいた内容によると、

一定の条件で「より正確に」「より早く」対応するためのトレーニングを続けてしまうと、その条件が整わなかった時に、逆に対応することができなくなってしまう、というものでした。

しかも、一旦そのようなトレーニングをしてしまうと、柔軟な対応ができるマインドを育てるには、ゼロから始めるよりも時間がかかってしまうといいます。

つまり、受験のように問題を早く正確に答えるための訓練すればするほど、他のクリエイティブな発想を阻害したり、社会やルールが変わった時にうまく適応していく力を削いでしまったりするリスクがあるわけです。

柳澤:なるほど。それは懸念すべきことですね。
ただ一方で、閉鎖的な社会構造ですから、そんな中にあって親御さんにも重いプレッシャーがかかっている、ということも理解できるんです、辛い立場ですよね。。

星:そうですね。周りの家族がお受験対策をしているのに、自分はできていないから、私はダメな父親だ、母親だと思ってしまう気持ちもわかります。

実際にお受験をやっている人たちから話を聞くと、勿論、これが子供にとって本当にいいことだと信じている方もいますが、子供にとってよくないとわかってはいるけれど、周りからのプレッシャーになかなか抗えないという人も一定数います。

私も、この受験教育の問題を、引き続きメッセージとして発信していきたいと思っていますが、結局、目指す出口が「いい学校」「いい大学」をよしとされている限り、なかなか受験競争は避けるのは難しい現状かと思います。

教育 → 行動変容力 → 健康

柳澤:今回「健康」と「教育」というテーマでお話をさせていただきましたが、やはり繰り返しお伝えしたいのは、ご自身が持っているスキルや知識・能力を「いかに使っていくか」という思考訓練の重要性です。

大人でも子どもでも、得た知識を自分の中で吸収して、それを自分に落とし込むことは、元々できることではなくて、やはり訓練が必要になります。

だから、「こうすれば健康に良い」という情報は常に世の中に溢れていても、それを全て自分に取り入れて実践している人は、なかなかいません。もちろんこれだけ溢れているのだから取捨選択する能力も必要になりますしね。

情報の中から自分にあったものを選択して、自分にあった形にする。そして、自分でそれを実践していくことは、実はステップが多くて難しい。

すると、その訓練をしていなければ、先を予測することもできず、どうしても目先の利益に飛びついてしまう、というループにハマってしまうんですよね。

星:知識やスキルを実践に生かしていく訓練を、教育の中でやっていくべきだということですよね。

柳澤:そうですね。ヘルス教育でもお話ししたように、ただ知識をつければ良いというわけではなくて、その知識から未来を予測して、今の行動を変容していくことに繋げる。そういう教育が必要です。

例えば病気の知識についても、みんなに「こういう病気があってこういう症状が出る」ということを医学部レベルで知ってほしいわけでは全くありません。

私は、研究員として健診で数値が悪くなった後にそこから治療までにどのくらい時間がかかっているか、投薬が必要になるまではどのくらいの期間なのか、またそこから合併症が発生する比率や、症状が出てからその合併症が発症するまでの期間や、外科的治療が必要になるまでに何年かかる、といった事実を記述する論文を書いていました。

研究者がこういったデータを世に出す意義と言うのは、この具体的研究結果を踏まえてどのように行動すれば良いのかを、現場で診療に当たる医師にまずは患者に伝えてもらい、そしてその上で患者さんの方では具体的に自分にはどんな未来が待っているのかを想像し、検討し、そして改善策にそって行動するということを行って欲しいからなのです。でもこう書くだけでも実際に健康行動に移るまでにはそれこそたくさんのステップがありますよね、難しくて当たり前で、すぐにできなくて当然なのです。

でもその行動変容の根本にあるのが教育であり、そこから自分の行動を変容していく力を身につけつけて、最終的に健康アウトカムに大きな影響を与える、ということを、どうやったら広く多くの人に伝えられるかということが、今の私の活動課題です。少しずつでも『考え方で健康は変えられる』ということを伝え続けていけたらと思っています。

星:教育が僕らの健康に対してもたらすべきものは「知識ベースだけではなく行動変容力なんだ」という、先生からの力強いメッセージですね。

【対談ゲストプロフィール】
柳澤 綾子 やなぎさわ あやこ

医師・医学博士 。東京大学大学院医学研究科社会医学専攻公衆衛生学分野 特任研究員。集中治療・麻酔科医として目の前に流れてくるたくさんの命を救いあげる日々 に疑問を抱き始めた頃、ハーバード大学公衆衛生大学院のイチローカワチ先生 の『命の格差は止められるか』という本に出会う。私の疑問の答えがここにあ るのではないかと考えた末、東京大学大学大学院医学研究科公衆衛生学の博士 課程に進学。社会疫学、医療経済学およびデータサイエンスを学ぶ中で、『病 気になったから会いに行くドクター』ではなくもっと上流にアプローチする医 師が必要だという考えに至り、博士課程修了後自ら『Medical Health Coaching Lab.』を立ち上げる。現在、臨床現場では麻酔科指導医として手術 業務に従事、研究分野では客員研究員として研究を行いつつ、ママ女医の立場 から健康格差解消のための啓蒙活動に尽力、講演、記事監修や執筆等を行なっ ている。

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