「教育」は時代遅れ。『学育』の視点を!
今回は、このブログのテーマにもさせていただいている「学育」という考え方を少しご説明させていただこうかと思います。
教育vs 学育
これは、私が知る限り、私が勝手に言い出した造語です。
「教育」という言葉の「教え育てる」という視点に対比して、「学び育つ」で「学育」というわけです。
「教育」とは、教師が子供を教え育てることである。そのためには教師は何をしたら良いか。講義の内容は適切か。カリキュラムや授業方法は効果的か。こうした問い自体が、教師や教材、教育方法の側の視点に傾いています。
そのため、子供は、教師や教材に教えられるべき、受け身の存在として捉えられてしまいがちです。授業で伝えられる情報を理解し、記憶して、与えられた課題をこなしていく。
「詰め込み式」と揶揄される受験型の教育は、こうした意味での「教育」のイメージにマッチします。
しかし、熟練した教師がベストといわれる教材でベストの授業をしたとしても、それを受けた子供が実際に学ぶことができなければ、全く意味がありません。
いかに「ベスト」の教育が施されたとしても、学習が起きるとは限らないのです。
そもそも、教育の最終目的は教えること自体ではなく、教えるという手段によって、子供が学ぶことなのです。
「学育」は、「教育」が陥りかねない教える側の視点への偏重を避けて、学ぶ主体である子供に焦点を置きなおそうというスローガン的な言葉です。
「学育」の視点は、能動的で主体的な学びのプロセスを中心的なイメージにおいています。
講義の内容や授業の課題を受動的にこなしていくのではなく、題材を批判的に考察したり、自ら問いを立て自分の理論を展開したり、プロジェクトを遂行したり、自らのカリキュラムやスケジュールを選択したりしていく。
子供をそうした学びの主体として尊重し、その主体性を更に養い、 子供の学習条件を最適化するようにサポートしていこうというのが「学育」のメインの視点です。
教育者は「学ぶ欲求のサポート」までしかできない
そもそも、学ぶということは人間の根本的な欲求、また、能力の一部です。
人間は周りの世界に興味を持ち、その中で適切に振る舞うスキルや知識を身につけることができるようにプログラムされています。
目の前にないものを想像したり、抽象的な概念を使ったり、高度な認知的学びを本質として身につけたことが、人間の進化論的優位につながったと考えられてきました。
人間は学ぶ生き物で、そのように進化してきたのです。
私たちにできることは、たかだか、そうした人間の本性をサポートしていくことであって、それ以上ではないのです。
学びの主体である子供を中心に考え、その子供にフィットする学習条件を模索し、学びを促していく。
そのことが私たちにできるベストの学習サポートだというイメージを意識することが、目まぐるしく変わる現代社会で、より必要になっています。
「教育」と「医療」の深い関係
「学育」という考え方をさらにイメージしていくのに、 医療、もしくは、医師の役割とのアナロジーが役立つかもしれません。
例えば、医療の目的、医師の役割は病気や怪我を治すことであるという考え方はごく自然なものだと思います。
この怪我、あの病気を治してもらった。これこれの病院に行き、あれあれの医者に診て貰えば必ず治る。そういった物言いや、考え方は日常的なのではないでしょうか。
しかし、最良の教育方法で行うベストの授業でも、それによって子供が学べないこともあるのと同様、最良の医療を名医が施したとしても、怪我や病気が治癒しないこともあります。
最良の教育も子供の学びが伴わなければ意味がなく、最良の医療も患者の治癒が伴わなければ意味がないと言うわけです。
また、学ぶということが人間の根本の一部であるのと似たような意味で、人間の治癒力も生物としての本質の一部であるということが言えると思います。
軽い擦り傷や、風邪は自然と治ります。より深刻な怪我や病気は何らかの手術や薬などを必要とするかもしれません。
しかし、どのような医療的処置でも結局は人間の治癒力を前提としており、人間の根本的な治癒力なしに医療や医師が怪我や病気を治すことはできません。
もっとも効果的な薬も、意図された効果を発揮しないことがあります。 条件によっては効果が発揮されないどころか、重度の副作用を引き起こしてしまうことすらあります。一般的な風邪薬や頭痛薬が人を死に至らしめることだってあります。
そういった意味で極言すれば、医療自体が怪我や病気を治すことができません。
医療が可能にするのは、治癒をうながしサポートするということにつきるということができます。
医療のもたらすサポートの上で、実際に病気や怪我が治癒するかどうかは、最終的には人間の治癒力やその他様々な外的要因に委ねられなければなりません。
医療や関連技術の爆発的な発展にもかかわらず、未だ医療や医師は「神の手」を有してはいないのです。
そうは言っても、もちろん、医療においては、多くの薬や手術などについて、怪我や病気の治癒と非常に高い相関が実証されています。そのような関係が発見できたことが、医療の高度で急速な発展を可能にしてきました。
一方で、これまでの教育学は、教育方法とその効果を、頭痛薬と頭痛の改善のようなレベルで関係づけることができませんでした。
そのため、医療の本質が治すことでなく、治るのをサポートすることであるということ以上に、教えることの本質が知識やスキルを結果として学べるようにサポートすることであるという視点が重要になってきます。
医療や医師が神の手に届かないならば、 なおさら、教育や教師にはなおさら届かないのです。
人間の治癒力を前提し、治癒条件を最適化していくことが医療であるならば、主体的学びという人間の本性を尊重し、学習条件を最適化していくということが「学育」の視点です。
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