【教育者にとっての必需品】東大も輸入した「ティーチング・ポートフォリオ」とはなにか?
昨日は私の主催する「教え人フォーラム」の第9回目の総会を、小金井にある国際基督教大学高校、通称ICU高校で行って来ました。
もうだいぶ前(!?)になってしまいましたが、ICU高校は私のかつての学び舎です。卒業生として、母校に少しでもギブバックできないかということで、教育関係に進んだ卒業生と現旧のICU高校教職員を対象にした教育フォーラムを5年ほど前に立ち上げました。
毎回様々な教育トピックを扱い、参加者の発表やワークショップなど、活発な意見交換やネットワーキングの場を提供してきました。
日本の「ティーチング・ポートフォリオ第一人者」とワークショップを開催!
今回の「教え人フォーラム」では、東大の栗田教授をご招待して、ティーチング・ポートフォリオに関するワークショップを行いました。
栗田先生は現在、東京大学総合教育研究センターに在籍されており、日本におけるティーチング・ポートフォリオの第一人者です。同センターで東京大学の大学院生と教員を対象に教育力の向上を目的とした「東京大学フューチャー・ファカルティー・プログラム」を企画、担当されています。東大の大学院生や大学で教えている人たちの教え方トレーニングをやってらっしゃるというわけです。
最近まで面識がなかったのですが、同センターに席を置く吉田塁君を通じて知り合うことになりました。吉田くんはICU高校と東大の両方で私の後輩になります。「教え人フォーラム」にも参加してくれています。以前このブログでも書いたアクティブ・ラーニング(過去の記事で詳しく解説をしています。)やMOOC(大規模オープンオンライン講座)などの先端の教育トピックを研究してきました。
栗田先生と吉田くんが、夏に私が校長をしているスタンフォード・オンライン高校に訪問してくださった時に、今回の「教え人フォーラム」でのワークショップのアイディアが生まれました。
「ティーチング・ポートフォリオ」とは?
ティーチング・ポートフォリオは、個々の教育者の教育理念や、教育方針、教育実績、また、それらに関係する資料などをまとめた書類のことです。「TP」と約されて、アメリカでは幅広く普及してきました。教員や教育機関のポジションに出願する時には欠かせない書類です。
自分がこれまでどのような授業を担当してきたか。どのような方法で教えてきたか。どのような評価を得てきたか。その上でどのような教育理念を持つように至ったか。そんな感じで、教育者としての自分の実績を振り返りながら、教育に関する自分の業績や、考えやアプローチを述べた書類をTPと言います。私も大学院生の時に教授職に出願する時に作成して以来、機会あるごとに更新してきました。
TPは、学校やそのほかの教育機関が教員を雇用するときに、応募者の適性を評価するのに役立ちます。それと同時に、教員を志す側で自分を学校側にアピールしていく大切な資料になっています。
しかし、TPの本質は、教育者として自分の教育方法や理念を振り返ることで、より意識的に教育力の向上を目指していくことができる、ということにあるんだと思います。自分の教育活動を包括的に振り返ることで、今後の前進の方向性に生かしていくことができるという利点がこれまでも議論されてきました。
ティーチング・ポートフォリオがどんなものかもっと知りたいという方は、栗田先生のホームページ(https://kayokokurita.info/)、もしくは、栗田先生の運営するティーチング・ポートフォリオ研究会の(http://a4tp.info/)ページをご覧ください。
ティーチング・ポートフォリオを日本の教育者に普及
栗田先生のミッションの一つは日本でティーチング・ポートフォリオを普及させることです。吉田くんとコラボして、多くの教育機関や、教育者のグループにTPの作り方のワークショップを行っていらっしゃるということです。「教え人フォーラム」の前日は京都で、次の日は広島でと、とても忙しい様子でした。
まだまだTPは、日本の教育現場ではあまり馴染みのないものなので、丁寧に時間をかけて、ひとりひとりのTPの作成をサポートしておくことが重要です。初めてTPと向き合う日本の教育者のために、栗田先生と吉田くんは、TP作成のための便利なツールを開発してきました。
昨日の「教え人フォーラム」では、そうしたツールの一つである、TPチャートというものを作成しました。具体的な自分の教育活動から始めて、方針や理念、今後の目標などを書き出して、明快にまとめていくための方法です。TPを書いて行く際に、自分の考えを俯瞰的に見て行くことができる便利な枠組みです。
非常に手軽で、数時間で完成することができます。いきなりフルのTPを作成するというのもハードルが高いので、TPチャートで考えを明快にまとめることだけでも、自分の教育を振り返るのに非常に便利だと思います。私自身もやってみたのですが、今後のTPの普及に、まずは手軽なTPチャートが役立つであろうと確信しました。気になる方は栗田先生のサイトでチェックしてみてください。
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