厳しい上司が生産性を上げられない理由

マネジメント

昨年出版した「スタンフォード式 生き抜く力」(https://amzn.to/32M22u3)関連の講演などを社会人の方々にさせていただくときによくリーダーシップに関する質問を受けます。

謙虚なリーダーシップが「レベル5」? 部下の主体性を重んじるみたいなことはキレイ事でビシビシやらないと伸びないのではないか?

部下を規則や規律で縛り上げ、叱責で喝をいれる。そんなやり方が部下の生産性を下げてしまうだけでなく、幸福度や健康状態までそこねてしまう。

反対に部下の主体性をサポートすることで、部下の生産性、幸福度や健康状態も良い形で維持できる。

などなど、主体性をサポートできるような仕事場作りの重要性が、これまでの研究の蓄積で明らかにされてきました。

特に最近私のオンラインサロン(https://community.camp-fire.jp/projects/view/221282)などでも数登場する「自己決定理論」の分野では、分厚い研究の歴史があります。

例えば、部下の生産性や幸福度、ウェルネスは以下など。Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2017). Work and organizations: Promoting wellness and productivity. In Self-determination theory: Basic psychological needs in motivation, development, and wellness (Chapter 21, pp. 532-560). New York: Guilford Press.  Baard, P. P., Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2004). Intrinsic need satisfaction: A motivational basis of performance and well-being in two work settings. Journal of Applied Social Psychology, 34, 2045-2068.

部下の主体性サポートと健康の関連はWilliams, G. C., Halvari, H., Niemiec, C. P., Sorebo, O., Olafsen, A. H., & Westbye, C. (2014). Managerial support for basic psychological needs, somatic symptom burden and work-related correlates: A self-determination theory perspective. Work & Stress, 28, 404-419.

しかし、現場のリーダーとしては、そういう方向性が分かっていても、なんだか腑に落ちない。疑問を感じる。そんな質問をよく受けます。

部下の主体性をサポートするようなリーダーシップのあり方について、よく聞く質問を厳選して、自己決定理論的な立場からお答えしましょう。

好き勝手に振る舞わせていい結果が出るのか?

「主体的」ということは「自由」ということではありません。

決まったルールや枠組みがあっても、それらに自分で十分に納得した上で、自分の決定をしながらやっていけるような環境をサポートすることで、部下が主体的に働いていることを実感することができます。

部下も頼れることを期待しているのではないか?

「主体的」ということと、「独立している」とか「だれかに頼らない」とかいうことは違います。

自分で必要を感じ、適切なトレーニングやサポートを求めることは主体的な行為です。

主体性をサポートしながら、部下が助けを必要としたときにこそ手を差し伸べられるそんな上司像が求められています。

部下にいい顔をするようで甘くみられてしまうのではないか?

部下をサポートすることに焦点を置くと、前に出てぐんぐんと引っ張っていくリーダー像を見せることができず、だらしない上司だと思われてしまうのではないか。

なんのために部下をサポートしているのか。その先にあるビジョンを作り上げる。それらをチーム内で提供して、同じ方向を見つめるように取り組む。

主体性サポートをすることは部下にペコペコとするわけではありません。

部下をサポートしながらも、ビジョニングやチームづくりの姿勢を提示して頼り甲斐のあるリーダーになりましょう。

我慢した先にいい結果があり、それで給料が上がることを部下も望んでいるのではないか?

期待するパフォーマンスに給料や賞与を紐付けることで、やる気が維持できたり、生産性が上がったり、満足度が上がるというのは、幻想のようです。(例えば、下記など参照。Olafsen, A. H., Halvari, H., Forest, J., & Deci, E. L. (2015). Show them the money? The role of pay, managerial need support, and justice in a self-determination theory model of intrinsic work motivation. Scandinavian Journal of Psychology, 56, 447-457.

一時的にやる気が上がったりしても、中長期的には続かない。

給与体系をパフォーマンスに直結させることで、生産性や幸福度が高く、やる気に満ちた職場はできません。

どういうところに注意すれば主体性をサポートできるのか?

理解、共感、選択を意識するといいと言われています。

まずは、部下がどうしてその仕事をやるべきなのか、全体のビジョンから意味づけをして、部下の理解をサポートすることが主体性への第一歩です。

それから、辛いことや苦境、部下の立場などに共感を示すことも大切です。

さらに、ルールや規則、枠組みなどを作るときにも、その中で部下が自分の選択をしたり、決定できるようにして、その選択と決定を尊重するようにしましょう。

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これらの質問や答えは、職場を前提としているようですが、もちろん教育でも主体性のサポートが大きな差を生み出します。同じような点を意識して、お子さんをサポートしてみてください!

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