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【星友啓校長×松田悠介さん特別対談②】グローバル人材とはどのような人物なのか?

前回のブログに続いて、NPO法人や、クリムゾン・グローバル・アカデミーなどの企業活動、政府の委員会などにも所属する『グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」』の著者である松田悠介さんとの対談をお届けします。

本日はパート2として、

「グローバル人材とはどのような人物なのか?」

をテーマにお話しいただきました。

英語で話せればグローバルに活躍できるのかといえば、もちろんそれだけでは足りません。真のグローバルリーダーを育てるためのスタンフォードGSPで一番人気の授業は、上の問いについて考える際のヒントになります。

Google の元CEOエリック・シュミットは、「共感力」こそが今後求められる力であると話します。

第2回となる今回は、

・スタンフォードで一番人気の授業は「感情を取り扱い方」
・多様性のある人をまとめられる人は「共感力」を持っている
・次世代のリーダーを育てる教育の形

などについてお話しします。

<松田さん>
今、グローバル人材の育成に向けて、様々な観点から取り組んでいます。
高校生の起業家を育てるインキュベーション施設、スタンフォードのアントレプレナーシップ、クリムゾン。どの環境でも大切にしているのが「共感力」です。

今まで知らなかったことを知った時、その課題に共感を持って、行動を改善していけるか。A、Bという分断された意見がある場合、両方に共感して、第三の解を生み出すファシリテーションをできるか。

言語はもちろん必要ですが、グローバル人材の本質は英語を話せることではありません。
共感力を持って、課題を解決する、つなげる、価値を見出すことができる人だと思います。
このご時世だからこそ、共感力が重要になっているのです。

<星校長>
世界を生き抜く力の根本は、共感力ということですね。
国際的なビジネス交流、グローバル化、グローバル教育がより必要になってきている今の世界だからこそ、共感性、多文化理解、コンピテンシーを育てていくことが重要です。

<松田さん>
共感力の大切さを身をもって理解したのは、GSBでの経験からです。

スタンフォードのビジネススクールで、Google の元CEOのエリック・シュミットさんとグループランチをする機会があったんです。

コロナ前、シリコンバレーの中心であるスタンフォードのビジネススクールで教えているエリックは、ビジネスの知識などでなく、「感情、共感の大切さ」について話していたんです。

GSBでは、インターパーソナル・ダイナミックス(対人力学)Touchy Feelyという授業が一番人気です。授業はとても重いので出ずに、僕はワークショップに参加しました。これは感情を取り扱う授業で、とても興味深いものでした。

詳しくお伝えはできませんが、色々な面で感情を取り扱い、人と人との関係性を強化する授業です。例えば、お互いにフィードバックして、感情の極限を作り、そこで感情が芽生えた時、どうつながり、共感し、自分で対処するか、メタ認知をしながら取り組むこともあります。

インターパーソナル・ダイナミックスの授業は、なぜこんなに人気なのか。
ビジネススクールだから、ファイナンス、イノベーション、テクノロジーが一番人気かと思いきや、感情を取り扱うものが一番人気の授業というのが、僕は疑問でした。

そこで、エリックに「これからビジネスをやっていく上で、なぜ、共感力、感情の側面が大事なのか?」と尋ねました。彼は次のようなことを話しました。

「これからの時代、イノベーションを起こす、何かの課題を解決するために、平均的な人100人、1000人と雇う時代ではない。それは工業化時代のやり方だ。これからの時代は5〜6人でいいんだ。何かしらの領域で突出した人とチームを組めば良い。

ファイナンスのプロ、リーガルのプロ、テクノロジーのプロ、セールスのプロ、サービスデリバリーのプロ、彼らを取りまとめていくCEOみたいな人がいればいい。このような、多様な突出した何かを持っている人たちが一緒になるからこそ、イノベーションが起こるんだ。だから、多様性が重要と言われているんだよ。違う価値観をぶつかるからこそ、新しいひらめき、学び、プロダクトが生まれるんだ。」

このような状況で、CEOとなるべき人、どんなリーダーが多様な人が集まっている組織をマネージできるのかを考えます。「皆、多様性多様性と無責任に言うけれど、多様性がある組織ほど統制するのが難しいものはない」とエリックは話します。

会計の特性を持っている人とセールスの特性を持っている人は、性格特性が全く違います。会計の人は、不正が起きないように全てをカチッとしますが、セールスの人は1.5倍増しに物事を話して、ビジョンを売ることもあるわけです。リーガルの人は違うことを、カスタマージャーニーの人はまた違う特性を持っている。

皆がバラバラの特性を持っているのに、もし、リーダーが自分のこれまでの生きた価値観、見えている世界観、特性に固執し、ダイバースなチームをまとめ、引っ張って行こうとしても、チームは破壊されます。

GSBは、多様な人が集まった組織を牽引していくリーダーを育てて行くための機関です。
多様性のある人々が集まったチームを導くリーダーは、感情をうまく取り扱えられる人だとエリックは言います。

性格、意見、話が合わないけど、「この人のために一肌脱いでやろう」と、ビジョンを信じ、コミットしようと思ってもらえることが大切なのです。ビジョンを掲げ、人のコミットを引き出し、感情的な要素をしっかりと引き出せる、繋がれる人が今後求められているという話をしていたのが、すごく合点がいったんです。

教育現場で、子どもは皆バラバラで、まとめるには教員の共感力が必須です。工業化教育ではそこまで求められてこなかったけれど、これからの時代はますます重要でしょうね。

僕自身、感情をしっかり取り扱うということがすごく不得意だったので、感情が取り扱うトレーニングを2年間できたのは、自分にとってはすごくプラスでした。

<星校長>
意外です。松田さんは感情について「操作する(manipulative)」ほどはいかないとしても、皆に好かれそうな人だと思うので、苦手だったとは驚きました。

<松田さん>
僕は全くできなかったです。いじめられていて、自殺まで考えていました。しんどい中学生活を送っていたので、そもそも人を信頼していなかったんです。

一番しんどかったのは、いじめっ子にいじめられる以上に、仲良いと思っていた人がいじめっ子側に回ったこと。自分を守るためだったと思うのですが、信頼している人に裏切られたことが辛くて、生きている価値がないと感じました。当時、恩師に救ってもらいましたが、これが原体験だったということを、スタンフォードでの対話の中で気づかせてもらいました。

このいじめられた出来事以降、人を信頼することなく、自分でやってしまうようになりました。そのおかげで力がついたのは間違いないけれど、リーダーにはなれていなかったと感じます。

大学の時、陸上部の部長でしたが、周りを信頼して任せられず、同級生と関係性を築けませんでした。だらしない陸上部だと感じ、全国に行くために、リーダーシップを発揮して、改革しようと引っ張りました。ただ、同級生は全員やめたので、結局、仲間と一緒にはやれなくかった。後輩はついてきましたけれどね。
その後大学に入り、体育学科なので、体育祭で団長をやったりしました。この時も、掲げているものは良いとしても、後輩は慕ってくれても、同級生はついてこなくて。一緒に作る、任せることができなかったんです。

教員になってからは、自分の教室を最高のものにするのが使命だと思いました。その時も、教員という一匹狼だとうまく機能するものの、対組織などでやろうとすると、対立し、うまくいかなかったんです。

ティーチ・フォー・ジャパンをやっている時も、最終的に「自分でやっていくんだ」「自分でお金を集めてくるんだ」「自分でプログラムも考えるんだ」と仲間との信頼関係を築けなくて。優秀な人はたくさんいましたが、「ヴィジョンに共感できなくなったので」とやめていって、自分も病気になって。

その状態で、スタンフォードに行ったので、スタンフォードでの2年間は、たくさん自分について気づきました。お互いの感情と経験をぶつけ合うことで、気づいたり、話をしていて内省して気づけたり、整理されたり、自己理解が深まる2年間でした。

感情、共感の優位性は、ビジネススクールで取り扱われている、今後ますます重要になる、世界的キーワードです。

教育の現場では、共感力の必要性を強く感じます。この力は、多様な人と繋がっていくための力、つまりは子どもの主体性、リーダーシップに繋がっていくと思います。

■松田悠介さんプロフィール


Crimson Education Japan の代表取締役社長、オンラインのインターナショナルスクール Crimson Global Academy の日本代表。大卒後、体育教師、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院で修士号を取得。その後、学習支援を展開するLearning For All を設立。同社CEOを2016年6月に退任し、2018年6月にはスタンフォードビジネススクールで修士号を取得。

日経ビジネス「今年の主役100人」(2014)に選出。世界経済会議(ダボス会議) Global Shapers Community 選出。2017年には日本財団の国際フェローに選出。2019年より、文部科学省 中央教育審議会 委員を務める。

著書に「グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」(ダイヤモンド社)」。https://www.diamond.co.jp/book/9784478023358.html

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