「ストレス」は学習に必要不可欠!?学びとストレスを考える。

教育

先日、日本に帰国している間に、東京で「自分の学びをデザインする方法」と題して講演をさせていただきました。おかげさまで満員をいただき、日本国内は沖縄からいらした参加者の方もおられ、大感激でした。

しばしば耳にするような学びのコツ的なものを10個取り上げて、それらの間違えを指摘し、その上で、自分の学びをデザインするのに重要な8つの鉄則を紹介するという形の内容で、90分お話しさせていただきました。

日本での講演は私にとって数少ない貴重な機会なので、ことにワクワクしてしまい、内容的には10回くらいの授業でやれるくらいのものを、一つの講演にぎゅっと圧縮した濃密な内容でお送りできたのではないかと思います。

その講演でストレスと学びについて少しだけ触れてみました。今回はその内容をご紹介程度に、サクッと取り上げて見ようかなと思います。

「ストレスはできるだけ避けなければならない。」は間違え

過度のストレスが私たちに与える影響については数々の科学的研究がなされてきました。例えば、ストレスによる影響が精神的なものだけでなく、身体的な疾患にもつながることはすでに広く知られています。極度のストレスが免疫の低下にも繋がってしまうということも有名になりました。同様に、ストレスが学習にも悪影響を与えることも、そう理解しがたいわけでもありません。

しかし、それをもって、良い学びをするにはストレスを全く避けきらなくてはいけないということではありません。それどころか、最近の認知科学の研究において、適度で短期的なストレスが、記憶や集中力を高めて、学習の効果を引き上げるということが知られるようになりました。学習だけでなく、適度なストレスで、免疫や判断力も上昇するということも分かってきたようです。

そうした研究結果の分析として、適度なストレスが身体や認知機能を向上させることが進化論的に優位であるということを指摘する人たちもいるくらいです。ストレスは動物個体への何らかの脅威であって、何らかの脅威があった時に、身体や認知機能が一時的に高まるというのは、進化的優位な性質だというわけです。

要するに、ストレスが全般的に悪いものではないのです。ストレスには良いストレスと悪いストレスがあるのです。良いストレスはパフォーマンスをあげて、悪いストレスは精神や身体に悪影響を及ぼすというわけです。

ここでいう「良いストレス」は、ポジティブ・ストレスとか、Eustressとか呼ばれたりします。反対に「悪いストレス」は、ネガティブ・ストレスとか、Distressと呼ばれています。

言い換えるとストレスは「できるだけ避けなければならない」というものではありません。そうではなくて、良いストレスと悪いストレスを見分けて、「うまく使いこなす」ものなのです。ストレスをうまく使いこなすことは、自分もベストの学びをデザインするために必要な一つのスキルです。

ストレスとのうまい付き合い方

それではどのようにして、ストレスをうまく使いこなしていけば良いのでしょうか。ここで、心理学の研究等でこれまで科学的根拠が与えられてきた「良いストレスの増やし方」をいくつかご紹介しましょう。

まず、今このブログ記事を読んでくださっている皆さんに朗報です。適度なストレスが学習を促進するということを知るということ自体が、ストレスへの耐性を上げる、もしくは、ストレスを良いストレスに転換する方法であるということがわかってきたのです。つまり、この記事を読んだだけで、少しストレスとうまくやっていける状態に近づいたと言えるかもしれません。ストレスがかかったときでも、それとの付き合い方で、より高いパフォーマンスが得られると知っていることで、前向きにストレスと対峙することができるということでしょうか。

それから、「もしも」のシナリオを考えておくことも効果的だということがわかっています。自分に今後ストレスがかかりそうなシナリオを想像しておき、そういった場合にどのように自分が対処するかというようなことをイメージしておくと、ストレスの耐性が上がるというのです。突然予期せぬことが起きて、極度の不安や緊張に襲われるよりも、そのようなことが起こりうるということを意識すること、また、実際にそういうことが起きた時にどのように行動するかを準備しておくことで、ストレスをうまく扱うことにつながるわけです。

これに似たような方法で、目標を明確に設定するというのがあります。明確な目標を設定することは、良い学びをしていくのに欠かせないことですが、ストレスをうまく使いこなしていく上でも役に立ちます。まずいことが起きたり、挫折しそうになっても、自分がどのような目標意識を持って、どのような計画に基づいて行動しているかということを意識できることが、ストレスの耐性につながるのです。

ここまで、ストレスの使いこなし方を3つ紹介しました。ストレスが学びに良いということを知ること。「もしも」のシナリオを考えること。目標設定をすること。どれもすぐに使える方法なので、ぜひ試してみていただけるといいかと思います。

もし、ストレスが溜まったら?

しかし、いくらストレスを良いものに変えようと努力しても、ストレスが溜まってしまうことはしばしばあることでしょう。ストレスが実際に溜まってしまった時には私たちはどうしたら良いのでしょうか。広く知られているテクニックの中で、科学的根拠があると思われるものを少し紹介します。

まずは、休憩すること。適度な休憩にはストレスが和らぐ効果があるということが立証されています。急がば回れで、休まず働いたり学習するよりも、休憩をうまく使っていくことで、目標に到達することが近づきます。

あとは、笑ったり、微笑んだりすることも効果的だと知られています。実際に面白かったり、微笑ましい気分になれるのであれば、それに越したことはありません。そうでないときでも、表情だけでも笑ったり、微笑んだりするだけでも、気分転換になり、ストレスを和らげる効果があることが知られています。ちょっと気持ち悪いですが、やってみてください。実際やってみた方のほとんどが、少し楽しい気持ちになったということをおっしゃいます。

それから、体を動かすことはとっても重要です。エクササイズが学習の効率を大幅に上昇させることは脳科学的にも明らかにされてきました。同様に、ストレスを軽減することにもエクササイズが効果的であるということがわかっています。週に3回30分、早足歩きなどで軽く息が上がる程度で、ストレス軽減の効果があるそうです。

最後に、「ストレスが溜まってまずい」と少しでも思えた時には、迷わず、躊躇なく、プロのカウンセラーや医師に相談しましょう。ストレスは誰しも抱える現代社会の問題です。サポートが必要なことは恥ずかしいことではありません。あなたの能力の限界を示すものでもありません。適切なサポートで、自分の能力や学習を最大限に引き出せるようにしていきましょう。

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