アメリカと日本の受験はどう違うのか?

教育
アメリカと日本の受験の違いについて解説

アメリカの高校の校長という現在の立場柄、アメリカの受験に成功するにはどうしたら良いか、という趣旨の質問を受けることが多々あります。ことに中国、韓国、日本などのアジア各国からの相談が多いように思います。学校レベルで、どう言った対策を生徒にさせていけば良いのかということの相談に乗ることもあります。

そう言った時に私が強調するのが、カレッジカウンセラーの重要性です。カレッジカウンセリングやカレッジカウンセラーを日本語で直訳しようとすると、大学進路指導や大学進路指導の教員といったような訳が当てはまりそうですが、日本の学校でいう大学進路指導とカレッジカウンセリングは全く異なる代物だと認識した方が良いと思います。

生徒が自分を売り込める、日本の受験??

このことを説明するのに、アメリカの受験を日本の受験と全般的に対比してみたいと思います。まず、日本の受験は生徒個人が自分自身を大学に直接売り込んでいきやすい、セルフマーケティングの方式になっているということができると思います。

つまり、入試で良い点を取ったり、高校や中学に在学中に良い成績を取っていけば、入学できる大学の選択肢が広がっていくというわけです。大げさに単純化すれば、点数を取れれば、他の人の力を借りずに、生徒は自分を大学側に売り込んで、選抜してもらうことができるのです。

こうした傾向は日本だけでなく、韓国や中国など他のアジアの国の受験方式にも少なからず共通しています。

学校側が生徒を大学に売り込むアメリカの受験

一方、アメリカでは、それぞれの学校が所属する生徒を大学側に、如何に売り込むことができるかということが重要になっています。いわば、学校側が生徒を大学に向けてマーケティングしていかなくてはいけないということです。

このことの背景として、アメリカの入試が、成績やテストの得点などに偏重しない書類審査中心の方法に基づいているということが指摘できます。アメリカの入試では、大学固有の試験が行われることは稀で、主に書類審査によって生徒の合否が判断されます。

書類審査は高校等での成績や共通テストの成績などを含みますが、エッセイや課外活動、出願の動機、推薦状など、学業成績以外も加えて全体的に評価するホーリスティックな評価が入試選抜に用いられています。

あえて誇張して言えば、日本で言うところの「お勉強ができる」だけではだめなのです。どのように人間として成長してきて、面白みのある生徒であるのか。該当する大学でどのような貢献をしそうなのか。大学の文化にはフィットするのか。

将来の成長の伸び代はあるのか。全体的な人間性や可能性、才能を評価するにはどうしたら良いのか。個々の大学で様々な指標やプロセスを用い、研究やノウハウの蓄積を重ねて、現在のアメリカの入試制度とそれを支える学校側の管理体制が築き上げられてきました。

例えば、アメリカの大学入試及びカウンセラー協会(National Association for College Admission Counseling, NACAC)が行うアンケート調査にこのことが顕著に表されています。NACACは隔年で各主要大学の入試オフィスに向けたアンケート調査で、どのような要素が入試において重要視されているかという動向を調べています。

この調査の結果の興味深いところとして、一般的に最も重要ではないかと思われるような成績の平均点や標準テストの得点などの学習指標が、あまり上位にランクされていないということが 挙げられます。このことはここまでに論じてきた成績に偏重しない、ホーリスティックな生徒の評価ということを裏付けているとも言えます。

一方でスクールプロファイル(下記参照)やカウンセラーの推薦状、加えて、教師からの推薦状といったものは常に上位にランキングされています。自分が頑張りさえすれば改善できる学習指標よりも、学校側が準備していく必要のあるスクールプロファイルや推薦状が重視される傾向がある。

この点は、日本の入試におけるセルフマーティングに対して、アメリカの入試が学校主導のマーケティングを必要としているという対比を如実に浮かび上がらせてきます。

カレッジカウンセラーの仕事

そうした書類審査中心の成績に偏重しない入試制度は、包括的なカレッジカウンセリングを前提としています。まず、多様で多数の学校が存在する中で、各学校からの成績を比べるということは至難の技ではありません。カリキュラムも日本のように統一化されておらず個々の学校での自由度が高いため、高校を偏差値で並べてそれぞれの学校からの成績を評価していくというような一元的な手法を当てはめることができません。

大学側が出願者の学習到達レベルを理解するためには、その出願者の学校のプログラムやカリキュラムを詳細に理解しなくてはなりません。それを可能とするために、カレッジカウンセラーの重要な役割の一つは、自分の在籍する高校を、生徒たちが出願する大学に売り込んでいくということです。

学校を大学側に売り込んでいくのに最も重要な材料として、スクールプロファイルとスクールビジットが挙げられます。スクールプロファイルは2ページの表裏の書類で、学校の歴史や、プログラムの特色、過去の進学実績等をまとめたものです。出願者向けの学校案内のパンフレットなどとは違い、大学側が学校について知っておくべき点を簡潔にまとめて、学校を紹介する専門性の高い書類です。

生徒の出願時に、成績表などと並ぶ必要書類として提出されます。スクールビジットは、大学の職員が行う高校への訪問のことで、該当する大学の職員が生徒にその大学を紹介したり、生徒からの質問に答えたりします。

大学が学生をリクルートしていく活動であると同時に、大学側がその高校を理解する重要な機会として捉えられています。どれだけ多くのスクールビジットをどれだけ良い大学と取り付けることができるかというのが、カレッジカウンセラーの腕の見せ所ということになります。

また、学校を大学に売り込んでいくことに加えて、もちろん個々の生徒を大学に売り込んでいくこともカレッジカウンセラーの重要な役割です。アメリカの大学入試では、これだけ素晴らしい学校のこれだけ素晴らしい生徒ですと、生徒を大学にマーケティングしていかなくてはいけないのです。そこで再び重要なのが、アメリカの入試が成績などに偏重しない書類審査中心であるということです。

入試必要書類は、主に生徒自身が作成するものと学校側が作成するものの2種類に分類されます。生徒が主体となって準備する出願書類の主なものとしては、学校での成績、統一試験の得点、加えて、志望動機や、学校生活、課外活動での経験などに関するエッセイなどがあります。

学校側からの書類には、教師からの推薦状、学校からの成績表とスクールプロファイル、また、カレッジカウンセラーからの推薦状というようなところが主な入試必要資料としてあげられます。カレッジカウンセラーはこの全てを統括して、矛盾なく一貫性のある形で生徒をホーリスティックに表現した入試書類セットを作成していきます。

日本の学校や学生がアメリカ大学受験について意識すべきこと

私が日本などのアジアの学校にコンサルテーションをするときには、ここまで議論してきたようなカレッジカウンセリングの重要性を強調します。アメリカの有名校に生徒を入学させようとする時に、多くの学校はまずカリキュラムをアメリカ向けのものにしていくことから考える傾向があります。それも良いかもしれませんが、カレッジカウンセリングのサポートをどのようにしていけるかを考えることを私は勧めることにしています。

同様なことが、学校だけでなく、出願者の視点からも言えます。アメリカ国外からアメリカの大学への入試を志す場合、所属している学校にカレッジカウンセラーがいることはほとんど期待できません。それに似たようなサポートがある場合もありますが、アメリカの有名校に受験を希望する場合には、競合するアメリカの伝統校のカレッジカウンセリング相手に比べうるものではありません。

その他受験のサポート会社などもありますが、多くの場合で、エッセイなどの生徒の書類の指導が中心になります。当然のことながら、カレッジビジットやスクールプロファイルの作成など、その他のカレッジカウンセラーの通常業務は行えません。

そのため、日本やその他のアジアから出願する場合は、ある種マイナスからのスタートだということを出願者が強く意識して、より積極的に行動していかなくてはいけません。詳しくアメリカの大学入試の制度を理解し、学校外のリソースを使用しながらも、学校とも緊密な連携と協力を取っていき、できるだけのことをして入試に臨んでいかなければなりません。

それは並大抵の努力では達成できませんし、両親や周りの支援者のサポートを取り込んでいくことが不可欠となります。しかし、それができれば、有名校への合格も不可能ではありません。私自身、実際にそういった海外からの出願で、見事合格をしてきた生徒を数多くサポートしてきました。海外に行くという強い意志のもとに具体的な努力をしていく覚悟が必要です。

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