【JETRO特別対談企画 ICU高校オンライン春休み講演会(前編)】

講演

【特別対談ブログ】World Matcha Inc CEO 「塚田英次郎」×グーグル プロダクトマネージャー 「田村芳明」×スタンフォード大学オンラインハイスクール校長 「星友啓」

〜グローバルな活躍を続ける秘訣〜

先日、JETROサンフランシスコ事務所長の山下隆也さんに企画いただき、母校の国際基督教大学高校にむけてベイエリアからオンライン講演をしました。いつもの仲間たち、World Matcha Inc共同創業者&CEOの塚田英次郎さん、グーグルプロダクトマネージャーの田村芳明さんとの対談企画です。今回は前後編に渡り、その時の様子をお伝えします。

塚田さんは、日米両国で20年に渡り、食品業界、特に茶事業で、新商品・事業開発を歴任。

田村さんは、グーグル プロダクトマネージャー NTT研究所にて仮想化技術とOSの研究開発に従事した後、シニアソフトウェアエンジニアおよびプロダクトマネージャーとしてミドクラに参画し、ご活躍されています。

大企業よりも、自分の意志が大事

星友啓(以下、星):まず、田村さんから見て、Googleのすごいところをお聞きしたいです。

田村芳明(以下、田村):世界中から人が集まるところですかね。

技術でも情報でも疑問があれば、すぐになんでも解決してしまう。
それこそ何かを発明してる人がゴロゴロいるのが普通の世界。

星:田村さんは元々日本で働いていたんですよね。

田村:最初はNTTの研究所で働き、「技術をやりたい」「研究開発で面白い技術を作りたい」と始めましたが、人に使ってもらえるまでには時間が掛かることに気が付き、製品を直ぐに出さないといけないようなスタートアップに移りました。

当然、安定した大企業から不安定なスタートアップに行ったので、家族からは白い目で見られました。

しかし、そこでも大きなイノベーションを起こすためには、自分にまだ欠けているものがあると思い始めたんですよね。

その時、たまたまGoogleでプロダクトマネージャーの募集があり、Googleで働く人に会えば、何か得られるかもしれないと思い、応募しました。

星:なるほど。
田村さんの場合はスタートアップに進まれましたが、塚田先輩が大企業にいながら、自分で起業したのは、なぜでしょうか?

塚田英次郎(以下、塚田):僕の場合、結果的にサントリーに21年いました。

ただその中で、僕が30歳前後の時に、「会社の社費でスタンフォードに留学した2年間の経験」がものすごく大きかった。

スタンフォードに来るといろいろ洗脳されるじゃないですか。

まずは、圧倒的に、起業家がリスペクトされている世界の中で、「大企業にいる方がリスクが高い」ということや、先生方も「君たちは起業していくんだから新しい事業を創っていけ」と言っていました。

だから、起業という選択肢も考えながら、それでも留学に行かせてもらった会社に何かしら返さないと自分の中で辞められなかったんですよね。

その後、しばらくはサントリーにいたのですが、2013年に伊右衛門特茶がヒットして、ようやく、会社に恩返しができた、という気持ちになれました。

そして、その後は世界を舞台に、スタンフォードで体感したアントレプレナーシップを体現していこうと思い、2017年に、社内ベンチャーみたいな形でStonemill Matcha Inc.を起業し、自分をCEOとしてサンフランシスコに派遣しました。

ただ、2019年に、サンフランシスコでMatcha Cafeの立ち上げを大成功させるも束の間、親会社から日本帰国の辞令がでました。これは、日本だけではありませんが、大企業って、結局、自分の人生を自分でなかなか決められない部分があって、僕は、米国での抹茶を広める仕事を続けたかったのに、続けられなくなってしまった。

ただ、僕自身、このときには抹茶を世界に広めることにコミットしていたので、それがサントリーの中で出来ないなら、もう一度ゼロベースで起業をし直すしかないと思い、2019年前に、21年勤めたサントリーを辞めて、いまのWorld Matcha Inc.を起業しました。

星:面白いですよね。大企業はリソースもあってやりやすかったり、インパクトも大きい部分もありますが、自分がやりたいようなものが出てくると、足枷になっていく。
後は、先輩が言っていたところで、大企業にいたら危ないよっていう感覚ですよね。

日本とアメリカの起業文化の違い

その点、アメリカは起業文化であるから、スタートアップのサポートは充実しています。

そこで、塚田先輩は日本でも事業を展開していますが、日本で起業するのとアメリカで起業するのとではどう違いますか?

塚田:シンプルにマーケットがアメリカの方があります。

例えば、僕の場合だと抹茶ですよね。

日本人の多くは日常では、抹茶よりも煎茶を飲みますが、アメリカ人では、抹茶を飲むひとは、日常的に飲みます。

コーヒーってカフェインの効き方が強すぎるので、もう少し緩やかにエネルギーを効かせながら生活したい人たちにとっては、抹茶がちょうど良いんですよ。

だから、アメリカから抹茶ビジネスをスタートすることに、まったく迷いはありませんでした。

あとは、アメリカの方が会計がやりやすいこと。Quickbooksという超絶使いやすいソフトウエアのお蔭で、経理のストレスは、かなり少ないです。

また、日本は消費税の取り扱いをとっても、超ガラパゴスですから、何となく、アメリカで起業する方が楽という感覚です。

ゆるいからこそ強い

星:私がスタンフォードをすごいなと思う理由として、リーダーシップの仕組みがディストリビューテットされてることがあります。

すごく自由にやらせてもらっていて、本当に自律性を持ってやらせてもらってます。
それこそ、Googleもそれぞれのユニットがあって、1回1回上からハンコをもらうなんてなさそうじゃないですか。

田村:例えば、テックカンパニーでも企業文化が全然違ってきます。
多くの人は、シリコンバレーっていうのは全部ボトムアップだと思っていますが、実はそうでもない。

例えば製造業や物流は、初期の一つのミスでとてつもないオーバーの遅れが出てきちゃう。

Googleの強みとして、今までなかった製品を作って、ないしは事業領域を作って成長してきているので、各人各グループでイノベーションをすごく大事にしている。

その中で、それぞれ自由にやれていることが、Googleの強さだと思います。

そもそもイノベーションは「それできるわけない。そんなことあるわけないじゃん」というところから始まります。

だからみんなが「いや、そんなことできるわけがない」とか「あり得ない」って言っていたら「あ、正しいところにいるんだな」ってこっそり思って、作り始める。

星:内容が素晴らしすぎますよね。
では、次に質疑応答に参りましょう。

シリコンバレーで起業する価値

生徒S:2つご質問があります。
まず1つ目に、リモート化が進み、中国とかも経済的に上がっている中で、シリコンバレーで起業する価値がなくなっている声も上がっていますが、そこに関してはどういうお考えでしょうか。

そして2つ目に、スタンフォード大学の高校生向けのイベントとして、Stanford e-Japan以外にイベントはあるのかお聞きしたいです。

塚田:元々シリコンバレーには、Stanford大学を中心としたエコシステムがあって、Facebookのマーク・ザッカーバーグも投資家の近くにいた方が良いということでハーバードを中退して、こちらに来てます。

少なくとも、ソフトウエアでのスタートアップの場合は、投資家やエンジニアの採用という意味で、シリコンバレーは場所としての価値があると思います。

そして、僕の事業はハードウエアが絡むので、投資家の観点では、必ずしも、シリコンバレーはベストではないです。ただ、ここには、GoogleやFacebookなどの巨大なキャンパスがあって、そこではみなさんが大量にコーヒーを飲んでいるので、そこを、なんとか抹茶に換えていきたい。従って、カスタマーアクイジションの観点では、やはり、ここは魅力的なエリアではあります。一概に、シリコンバレーが良い、悪いとかではなく、それぞれの事業ごとに最適な場所は変わっていくのだと思います。

星:そして、2問目の質問ですが、オンラインでのプログラムで「Summer Institute 」という2週間のプログラムはおすすめです。

あとは「Humanities Institute」や「サマーキャンプ」では人文学と数学をガチガチにやるプログラムがありますので、ぜひそちらを見ていただけたらと思います。

 

【対談ゲストプロフィール】

田村芳明(たむら・よしあき)

グーグル プロダクトマネージャー
NTT研究所にて仮想化技術とOSの研究開発に従事した後、シニアソフトウェアエンジニアおよびプロダクトマネージャーとしてミドクラに参画。グーグルではKubernetes、gVisor、AIのプロダクトマネジメントを担当。2016年よりアメリカ西海岸マウンテンビュー本社勤務。
*本インタビューは個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

 

塚田英次郎(つかだ・えいじろう)


World Matcha Inc CEO
1998年東京大学経済学部卒業後サントリー入社。在職中の2006年スタンフォード大学経営大学院(MBA)修了。日米両国で21年間に渡り、新商品開発や新規事業開発に携わる。18年Stonemill Matchaを米サンフランシスコで立ち上げた後、退社。19年1月World Matcha Inc.を創業。20年10月、米国で抹茶マシン「Cuzen Matcha」を発売する。Time’s Best Inventions of 2020を受賞。

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