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【星友啓校長×松田悠介さん特別対談④】日本の教育の問題点、今後の教育をより良くするためのヒントは何か?

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前回のブログに続いて、NPO法人や、クリムゾン・グローバル・アカデミーなどの企業活動、政府の委員会などにも所属する『グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」』の著者である松田悠介さんとの対談をお届けします。

本日はパート4(最終回)として、

「日本の教育の問題点、今後の教育をより良くするためのヒントは何か?」

をテーマにお話しいただきました。

世界のグローバルリーダーを輩出するためのクリムゾン・グローバル・アカデミーが取り組み、テクノロジーの取り入れ方、効率的な学習のために行うべきこと、オンラインとオフラインの住み分けなどは、今後の教育を考える際の重要な課題になることでしょう。

文部科学省のプロジェクトのおかげもあり、海外進学を目指す日本の中高生は年々増えてきています。

第4回の今回は、

・日本から海外の大学に進学しようとした際の問題点
・クリムゾン・グローバル・アカデミーで目指すもの
・世界を見てきた教育者が考える理想の教育の形

などについてお話しします。

<星校長>
松田さんは、クリムゾン・エデュケーション・ジャパンの代表を務められています。
主たるビジネスについて、詳しく教えてもらえますか?

<松田さん>
クリムゾン・エデュケーション・ジャパンは海外進学塾のような形で、オンラインのインターナショナル・スクールを日本でやっています。

海外進学の可能性を広げるために、最善の教育を0から作ろうと取り組んでいるのが、クリムゾン・グローバル・アカデミーです。2012年4月に全世界的に開校、日本でもスタートしました。アメリカ、イギリス、ニュージーランドの質の高い先生を採用し、24時間対応のカリキュラムです。

グローバルの代表、ジェイミー・ビートンは、自分でも創意工夫をして、アメリカ、イギリスの25校のトップスクール全てに合格。ハーバード大学に進学し、学士と応用数学のマスターを取り、通常5〜6年かかるところ、3年で卒業しました。

在学中から、自分の経験を還元しようと、YouTube、スカイプなどで、ニュージーランドの高校生に海外進学支援を開始。そこからハーバードの当時の学長ラリー・サマーズ、東海岸の投資家の力を借りて、ビジネスを立ち上げました。さらに、大学院の進学も支援をしたいと、自ら博士号を取得。自身の経験したノウハウをシステム化したのがクリムゾンです。

やっていることは、質の高いトップスクールに通っている、卒業している人のメンターネットワークを、必要としている人とオンラインを使ってつなぐこと。

例えば、日本で海外進学支援をしようとしても、コンサルタントは国内に皆いて、必ずしもトップスクールに行っていないこともあります。
審査の基準は毎年変わるので、本来、最新の情報は日本にいながら得るのは難しいです。だからと言って、グローバルに活躍しているコンサルタントが日本に来てくれるかと考えると、給料も安い、物価も高い、外国人にフレンドリーでは日本に来ることは考えられません。

それを踏まえて、クリムゾンでは、元々ハーバード、スタンフォードの入学審査官を実際にやっていた人が、コンサルタントをし、サービスを作っています。また、アメリカ、イギリスのトップスクールに通い、卒業した2400名が登録しています。

システム面に関しては、海外進学のプロセスはとても忙しいので、いつまでに何をしないといけないというスケジュールを全てテクノロジーで管理します。また、今までの3,000人分の出願データを使った機械学習で、子どもの特性、学びたいこと、予算から、アメリカに4,000校ある中から、自分に最も合う学校のリストが作られます。

テクノロジーを駆使して、教育の質を高めていることが、グローバルなマーケットの合格率と比較して2〜4倍という高い合格率実績につながっています。

最近はインターナショナルスクールからの依頼もあります。
一人のスクールカウンセラーが見られる生徒数には限界があります。また、日本の高校生は自分で主体的に志望校を考えることが苦手なのに、担当するのは高校3年生になってからという問題もあります。そこで、僕たちが進学のカウンセリングを担当するというコラボレーションも始まっています。

クリムゾン・グローバル・アカデミーでは、海外進学が生徒のゴールとは考えていません。合格後に社会起業家、ビジネスリーダーとして活躍して欲しいのです。そのために、ネットワークを作り、さまざまな機会を提供しているのです
これを回避するため、クリムゾン・グローバル・アカデミーでは、海外大学進学に活用できる「A-Level」「AP」などの資格を得られる、グローバルカリキュラムを提供しています。

1クラスは5〜6名、最多12名のオンライン授業です。少人数で行うことで同時双方型の学習を可能にし、2倍の進度で進みます。通常なら2年かかるプログラムを1年でできるようにして、空いた時間で、課外活動などに徹底して取り組んでもらうのです。

リーダーになる子どもたちを育てるという目的でサービスを作ると、既存の学校では非効率的とされますが、このような形を取ることで解消しています。
子どもたちの主体性、グローバル対応力、その先の可能性を広げられるような教育をしていくのがクリムゾン・グローバル・アカデミーなのです。

<星校長>
現在、日本からの海外留学、進学する方は増えていますか?減っていますか?

<松田さん>
ずっと増え続けています。文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」というプロジェクトで、官民連携で、予算も100億から200億円に追加になりました。プロジェクトの内容は、2万人の日本の高校生の、数週間から最大1年間の生活費、学費を出すというものです。

留学を経験し、海外の学びが魅力的、刺激的だと感じて、その後海外に進学する日本の高校生、大学生は増えています。コロナの状況で減ると思いきや、クリムゾン・エデュケーション・ジャパンの生徒数は増え続けているんです。

日本のオンライン教育には問題があるとなり、より質の高い教育を受けられるようになる必要があるのではないか、グローバル対応力を身につける必要があるのではないかと考える方が増えました。出願数の統計の合計は出ていませんが、新型コロナで短期留学はゼロになりましたが、学部、大学院の正規留学については横ばいです。

ここ最近のクリムゾン・グローバル・アカデミーの変革、新しくローンチしているカリキュラム、生徒の声を聞くと、大きな可能性を感じます。パートタイムから始めた生徒が、フルタイムに変えることも、とても良いシグナルだと感じます。オンラインで、最初は半信半疑だったけれど、学んでみると楽しいと思ってもらえている証拠です。

テクノロジーサイドでやれることはまだまだあると思います。

表情の解析し、視線の動線、頭の位置から、子どもたちの集中度をはかります。ただ、集中度の高低から良い悪いを判断することは目的ではなく、教員が見て、声がけできる、効果的に介入することで、授業のクオリティを上げることが目的です。

また、生徒たちの理解度、楽しかったか、楽しくなったかも含めて、授業が終わった直後に、生徒、メンターの先生からのフィードバックが教員にいくことは、新しい取り組みです。僕が教員をやっていた時には、フィードバックをもらったことはありませんでした。
即時のフィードバックは、授業内容のブラッシュアップにつながると思います。

教育はわかりやすいデータだけで決めるのではなく、今、データで見えていない選択肢を提示するのもとても重要だと思います。そのため、僕たちはありとあらゆるデータを集めています。むやみやたらに、恣意的に使うのではなく、適切に活用するために、ありとあらゆる回答率、正答率、出席率、スコア、発言回数、発言も全てログが取って解析することで、本人の特性を理解するツールとして使うことも有効です。

ただ、クリムゾン・グローバル・アカデミーの立場から離れて、教育者の立場として考えると、完全オンラインの教育は作りたくないと僕は思っています。

非認知的なことをオンラインで育めます。しかし、自然と触れ合う、感性を磨く、感情を育む、リアルな衝突、ストレスなど、オフラインだとより効果的に育める経験、体験もあります。自然体験、リアルな体験をどう提供できるのかを、今後は考えていきます。

今までの教育のやり方では、その時間は確保できませんでした。ハイブリッドの形で、オンラインで効率的に質の高い教育にアクセスすることで、時間を短縮できます。浮いた時間で、地域の絵画教室、自然体験教室、スポーツ教室、プログラミング教室など、自分の好きを徹底的に追求する時間を確保する。そこで、自分の興味関心がある領域に近い人とつながり、人と人との交流があり、ソーシャルスキルを身につけられます。

<星校長>
本当ですね。昔と今、オンラインとオフラインなどの二項対立ではありません。もっとスペクトラム的、連続的に、オンラインとオフラインが混ざってこそ、より良い教育になると僕も思います。

スタンフォードのオンライン高校を立ち上げて、最初に気づいたのはこの点でした。オンライン高校と言っても、色々な合宿、イベントがあり、これらがないと成り立たないのです。

オンラインのツールを使いながら、感情を伝えられるようになるのには時間がかかります。コロナの環境で子どもが家にいて気づきましたが、オンライン教育をやると家庭環境がガラッと変わります。

オンライン教育は、数十年かけて、少なくとも5〜10年かけて育てていくものだと思います。ここには引き続き注力する必要があると思います。

作り上げる、育て上げるオンライン教育は、始めたばかりだからシステムに改善の余地がありますし、システムを使う人、子どもたちも話すのも時間をかけて段々とうまくなります。オンラインでずっとつながっていると、初めて会った人でも感情移入しやすくなり、新たな関係性作りにつながっていくんです。

育て上げていく、時間がかかるものと意識しながら、オンライン、オフラインの二項対立ではなく、より良い教育を追求していきたいですね。

■松田悠介さんプロフィール


Crimson Education Japan の代表取締役社長、オンラインのインターナショナルスクール Crimson Global Academy の日本代表。大卒後、体育教師、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院で修士号を取得。その後、学習支援を展開するLearning For All を設立。同社CEOを2016年6月に退任し、2018年6月にはスタンフォードビジネススクールで修士号を取得。

日経ビジネス「今年の主役100人」(2014)に選出。世界経済会議(ダボス会議) Global Shapers Community 選出。2017年には日本財団の国際フェローに選出。2019年より、文部科学省 中央教育審議会 委員を務める。

著書に「グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」(ダイヤモンド社)」。https://www.diamond.co.jp/book/9784478023358.html

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