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【星友啓校長×松田悠介さん特別対談③】グローバル人材に大切な共感力について

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前回のブログに続いて、NPO法人や、クリムゾン・グローバル・アカデミーなどの企業活動、政府の委員会などにも所属する『グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」』の著者である松田悠介さんとの対談をお届けします。

本日はパート3として、

「グローバル人材に大切な共感力について」

をテーマにお話しいただきました。

日本人が、海外の人に比べて優っている能力について、日本の「繋がり」「思いやり」の意識が貢献していると考えられています。これは、ビジネスの場面だけでなく、学校教育の現場などで、数値にはあらわれない大きな価値になっているとされます。

アメリカのように、イノベーションを起こせる人材を日本で育てるためには、必要なのは何か?

第3回となる今回は、

・成果主義では見えない、日本人独自の強み
・日本のカルチャーを汲み取って、より良い教育を考える方法
・背景を理解することの大切さとは?

などについて話します。

<星校長>
松田さんは、ベイエリアで学び、今、日本に帰ってきて、グローバルな企業の一翼を担っていると思います。

社員、ビジネスパートナーも日本人が多いと思うのですが、日本特有の企業文化、社会人皆が持っている文化、アメリカや海外の人たちが持っているものと比較して、良いと思う点、やりにくいと思う点について、松田さんはどう考えていますか?

<松田さん>
うちのスタッフは、本当に子どもたちのことを考えています。そこが、グローバルの他の国とは少し違う部分です。

他の国の方、欧米の方は「成果が出れば良いでしょ」「海外進学に合格すれば良いんでしょ」という成果主義的な考え方を持っています。ただ、僕たちはそれだけでは難しいと思っています。

自立している人、成熟した大人を対象とするなら、プロフェッショナルアドバイスだけを提供すれば良いと思うんです。しかし、教育システムの影響もあり、日本の高校生は成熟していません。

海外では積極的に教科を選択し、主体的に学ぶカリキュラムになっている学校が多い。
しかし、日本の場合は全てが用意されています。チャイムが鳴り、起立して、「何ページを開きなさい」と指示される。学校外の経験は、部活動くらいしかありません。学校、部活、塾という環境で主体性が育まれず、成熟しません。
欧米的な成果至上主義で、主体的にやっていく人は、プロフェッショナルなアドバイスというサービスから価値を受け取れますが、そうでない人は価値を受け取るのが難しいのです。

クリムゾン・エデュケーション・ジャパンでは、主体性のない子どもたちでも自分の望む方向に進んでいけるようにするため、国内向けにアレンジして、メンタリングプログラムを作り、課外活動も伴走するプログラムを作っています。

また、セールススタッフたちの考え方も、日本と海外の方では全く違います。

海外のセールススタッフは売ることが目的で、売るところまでで終わりです。一方、日本のスタッフは、売って、サービスが始まってからも、進捗を一緒に確認しようとしたり、親御さんに電話をしたり、セールススタッフとして「売る」という自分の領域を越えて、生徒さんのサポートを自然と行うことがあります。上からの指示などはなくても、自発的に、お客様に対して責任を持ち、丁寧な対応をするのです。

このような関わり方、責任の取り方は、日本の学校においても同じです。

アメリカの学校の先生は教えることだけに終始します。日本の学校の先生は、第二の家庭のように、幅広く子どもたちの面倒を見ます。
人によってはやり過ぎだと思うかもしれません。でも、僕はそこに尊い何かがあると感じます。

相手のことを結果だけで見るのではなく、本当に思う精神がなければ、日本の教育で成果を出すことは難しいと思うのです。

<星校長>
そうですね。成果主義、目標だけに集中することが必ずしも最良のやり方ではない。っそれどころか、適度にしないと、害悪もかなりあると思っています。松田さんがおっしゃったのと同じではないでしょうか。

20世紀の終わりから盛り上がってきた心理学の主要理論の一つに自己決定理論というのがあります。数値や外的な目標成績、お金などを目標に設定すると、その仕事をやること自体に対してもっている内発的なモチベーションが崩されてしまう。それをやることが単に楽しくて、幸福だからやっているというようなことでも、「お金をあげるから」などと外的なインセンティブを導入してしまうと、元々あった内発的なモチベーションが潰されてしまうんです。

松田さんは、「日本の良さを出しながら、教育を変えていけたら良い」とおっしゃいますが、数値に出ない部分に、良さがあることがあります。セールススタッフの話には、繋がりの価値観、日本の思いやりの価値観にも関係すると思いながら聞いていました。

しかし、現実を見ると、成果主義バリバリのアメリカで、イノベーションは起きています。多様性にあふれた風土も関係するかもしれませんが、子供たちは比較的主体性、選択する力なども挫かれずに育っているのですよね。一方、それをやっていない日本は、主体性やイノベーションが起きにくい。パラドックスだなと感じます。

<松田さん>
難しいですね。
カルチャーは無視できないという面もあります。アメリカのイノベーションゴリゴリの資本主義では形になるけれど、それをそのまま日本でやってもうまくいかないと僕は思います。

歴史ブームが起こり、日本のリーダーも歴史を学ぶ人が増えました。グローバル人材としては、文脈を理解する力、コンテクストを理解する力も大切です。

日本の歴史のみならず、世界の歴史も理解しなくてはいけない。例えば、アメリカでビジネスをやるなら、アメリカの歴史を理解すること。
コンテクストを理解して、エビデンスを参考にしながら、解を導き出す力が、今後はより重要になると思います。

■松田悠介さんプロフィール


Crimson Education Japan の代表取締役社長、オンラインのインターナショナルスクール Crimson Global Academy の日本代表。大卒後、体育教師、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院で修士号を取得。その後、学習支援を展開するLearning For All を設立。同社CEOを2016年6月に退任し、2018年6月にはスタンフォードビジネススクールで修士号を取得。

日経ビジネス「今年の主役100人」(2014)に選出。世界経済会議(ダボス会議) Global Shapers Community 選出。2017年には日本財団の国際フェローに選出。2019年より、文部科学省 中央教育審議会 委員を務める。

著書に「グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」(ダイヤモンド社)」。https://www.diamond.co.jp/book/9784478023358.html

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